2014年06月10日 06:00 公開

麻酔が効く部位と効かない部位がある?

 昔、胸椎を圧迫骨折した際に、骨折に気づかず痛み止めとして麻酔注射を打ったことがあります。部分麻酔が効いたはずなのに、動いた途端、背中に激痛が走りました。麻酔が効く部位と効かない部位があるのでしょうか。

ケイちゃん(30代男性)

麻酔が効きにくい場合はあります。

 骨折すると、その刺激は神経を伝わって脊髄に入り、一部は脳で痛みとして感じ、一部は脊髄の反射路を介して、骨折した部位を支配する運動神経や交感神経を刺激します。筋肉は硬く、血流は悪くなって、酸素不足や代謝産物の蓄積を招き、痛みを一層強くします。そしてこの強い痛みが運動神経や交感神経をさらに刺激して、ますます痛みが強くなる「痛みの悪循環」に陥ります。

 脊椎の圧迫骨折は、寝ている姿勢から起き上がろうとする瞬間に鋭い痛みが生じ、いざ立ち上がればなんとか歩けるし、痛みも少ないという特徴があります。時間の経過とともに痛みは弱くなるものの、動いた瞬間に鋭い痛みはよく生じます。

 痛みの原因が分からない状態で「痛み止めとして麻酔注射を打った」とのことですが、局所麻酔で痛みを抑えきれないことはあります。

 骨折などによって組織の炎症が強いと、局所麻酔薬の効果は減弱すると考えられています。また、麻酔の投与方法により、どの組織まで麻酔が効くかは異なりますし、十分に麻酔が到達しないこともあります。麻酔を打った部位が適切でない場合も、痛みの伝達路を断てず、十分な除痛効果が得られません。

 麻酔で痛みが全て消えるわけではないのです。痛みを我慢せず、主治医へ相談し、痛みの原因を突き止めて根本的な治療を受けてください。

中野 里美(なかの さとみ)

 1990年、東京女子医科大学卒業後、慶應義塾大学医学部内科学教室に入局。都立広尾病院、国立病院機構栃木病院などを経て、2007年から三菱UFJニコス株式会社診療所勤務。同社において初代統括産業医として、社員の健康管理を行っている。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会専門医、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント。