2014年08月14日 10:30 公開

整体などの"首ポキ治療"による脳卒中を警告―米学会

 整体や骨接ぎ、カイロプラクティックなどで行われている"首ポキ治療"こと「スラスト法」。首の骨(頸椎=けいつい)に急激な回転を加える矯正治療のことだが、そうした施設で受けるだけでなく、自分でも日常的についやってしまう―という人も少なくないのでは? かねてから"体に良くない"といわれていた行為だが、米国心臓協会と米国脳卒中学会は、スラスト法が脳卒中を引き起こす可能性があるとの声明を、8月7日発行の米医学誌「Stroke」(電子版)に掲載した。なお、スラスト法について厚生労働省は「患者の身体に損傷を加える危険が大きいため、こうした危険の高い行為は禁止する必要がある」との通達を出している。

首への負荷で頸動脈が裂ける

 声明によると、スラスト法が直接、脳卒中を引き起こすのではなく、頸動脈解離を介してのもの。血管(動脈)には3層の壁があって、血液が流れている最も内側の壁を内膜という。頸動脈解離は、この内膜に何らかの原因で傷ができ、その裂け目から血液が流れ込んで内膜が中間の壁(中膜)から剥がれてしまう状態のこと。スポーツ、むちうち、ストレッチ、突然の動作、激しい咳(せき)・嘔吐(おうと)などによって首に瞬間的に強い負荷がかかることが、"何らかの原因"の12~34%を占めているという。

 頸動脈というと首の前側にある太い2本の動脈(総頸動脈)を想像しがちだが、これまでの研究では、スラスト法によって頸動脈解離が発生する場所は、首の骨を走る椎骨動脈が多いと指摘されている。

 スラスト法と脳卒中や頸動脈解離との関連は、これまでもいくつかの論文で指摘されている。2003年に米医学誌「Neurology」(2003; 61: 1314)に発表された論文では、45歳以下の脳卒中患者は1週間以内にスラスト法を受けていた割合が5倍以上だったと報告。また、脳卒中だけでなく、骨や関節の損傷を引き起こすことも指摘されている。

「低リスクだが施術前に説明を」

 声明の責任著者である米ロヨラ大学シカゴ校医学部のJose Biller教授(神経学)は「頸椎の矯正治療と頸動脈解離との因果関係は証明されておらず、そのリスクはおそらく低い。ただし、頸動脈解離は重い神経損傷をもたらす可能性がある」とコメント。スラスト法を含む施術を行う人に対し、「施術前に頸動脈解離に関する情報を患者に伝えるべき」との見解を示している。

 両学会は、スラスト法など首の矯正治療を受けた後、首の後ろや後頭部の痛み、目まい、複視(物が二重に見えること)、歩行が不安定、言語不明瞭、吐き気や嘔吐、目玉が動かしにくいなどの症状を感じた場合は至急、医療機関を受診するよう呼びかけている。

 なお、厚労省は脳卒中との関連には触れていないものの、1991年の通達でスラスト法を「一部の危険な手技の禁止」の対象に認定。「カイロプラクティック療法の手技にはさまざまなものがあり、中には危険な手技が含まれているが、とりわけ頸椎に対する急激な回転伸展操作を加えるスラスト法は、患者の身体に損傷を加える危険が大きいため、こうした危険の高い行為は禁止する必要があること」とし、各都道府県の衛生担当部署に指導するよう求めている。

(編集部)

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