2014年08月15日 10:30 公開

枯葉剤の影響弱まる? ベトナムの奇形率「日本より低い」

愛知学院大調べ

ベトナム戦争時の米軍による枯葉剤散布の様子
ベトナム戦争時の米軍による枯葉剤散布の様子

 ベトナム戦争中、米軍によって散布された枯葉剤は、その後も長きにわたって人々を苦しめている。その一つに挙げられるのが奇形などの先天異常だが、大量散布されたベトナム南部での発生率が減少している可能性が示された。愛知学院大学歯学部の新美照幸講師(口腔先天異常学)は、2008~13年にベトナム南部の病院で生まれた4万5,000人について調べたところ、奇形の発生率は「日本よりむしろ低かった」と、7月26~27日に麻布大学(神奈川県)で開かれた日本先天異常学会の会合で報告。ただし、同時期に現地で超音波による出生前診断が普及してきたことから、人工妊娠中絶によって奇形の発生率が減った可能性も指摘している。

日本より0.5~0.6ポイント少ない

 新美講師らは、2008年1月1日~13年12月31日にベトナム南部ベンチェ省のグエンデンチュー病院で出生した子供4万4,587人を対象に、先天異常の発生率を検討。先天異常は、日本産婦人科医会の観測システムで定められている33種類の奇形(マーカー奇形)に該当するかどうかで判断した。

 グエンデンチュー病院を選んだ理由として、同講師は「ベンチェ省の拠点病院で、省全体の約半数に当たる年間6,000~8,000件の分娩(ぶんべん)を扱っているため、省全体の目安になると考えた」と述べた。なお、愛知学院大学歯学部は1993年からベトナム南部で医療援助を行っている。

 調査の結果、マーカー奇形の発生数は193件で、出生数に占める割合は0.4%。日本での発生率は0.9~1.0%とされていることから、新美講師は「日本よりもむしろ低い結果」と評している。また、年別の発生率は2008年で0.7%、09年で0.5%、10年で0.2%、11年で0.4%、12年で0.5%、13年で0.4%だった。

出産時点で見落としの可能性も

 ベトナムでの枯葉剤の影響は弱まっているとも受け止められる結果だが、新美講師は「グエンデンチュー病院では1日当たりの分娩数が多いため、リスクの高い分娩以外は助産師のみで対応しており、先天異常の報告も助産師が行っている。ここで異常がないと判断されると医師の診察を受けることなく退院するため、出産の時点で見落としがあった可能性も考えられる」と指摘。

 さらに、この地域でも近年、超音波による出生前診断が普及していることから、奇形の発生率減少に人工妊娠中絶が関わっている可能性もあるという。

 こうした点を視野に入れ、今後も調査を続けていくとしている。

(編集部)

  • マーカー奇形......水頭症、小頭症、無脳症、脳瘤(のうりゅう)・脳髄膜瘤、単前脳胞症、口唇裂、口蓋裂(こうがいれつ)、口唇口蓋裂、顔面裂、多指、多趾(たし)、合指、合趾、裂手、裂足、上肢の減数異常、下肢の減数異常、上肢の絞扼輪(こうやくりん)症候群、下肢の絞扼輪症候群、食道閉鎖、腹壁破裂、臍帯(さいたい)ヘルニア、直腸肛門奇形、膀胱(ぼうこう)外反、尿道下裂、性別不分明、小眼球症、外耳道閉鎖、小耳症、軟骨無形成症、二分脊椎、結合双生児、ダウン症候群

関連リンク(外部サイト)