2015年02月13日 10:30 公開

"便の移植"で肥満、腸内細菌だけなく体形も提供者似に?

米報告

 ディフィシル菌(Clostridium difficile)という細菌に感染すると、治療薬の抗生物質が効きづらい重い下痢に悩まされる。その治療の切り札とされるのが、健康な人の便を患者の腸に注入する便移植。ところが、腸内細菌だけでなく、体形までもが便の提供者に影響される可能性が報告された。2月4日発行の米国感染症学会誌「Open Forum Infectious Diseases」(電子版)に掲載された論文によると、32歳の米国人女性が娘から便移植を受けたところ、体重が急激に増加して肥満の域にまで到達。母親はそれまで、生涯で肥満になったことはなかったという。

ディフィシル菌による下痢の切り札のはずが...

 粘膜を破壊する毒素を持っているディフィシル菌に感染すると、重い下痢を繰り返すのが特徴。初めて再発した場合、バンコマイシンという抗生物質が効く確率は6割程度とされており、再発を繰り返すたびに確率はさらに下がっていくとされる。再発の一因に挙げられているのが、腸内細菌の種類が偏ることだ。

 腸内細菌の乱れを整えるというと、ヨーグルトなどの乳酸菌食品による「プロバイオティクス」が有名だが、その"究極の手段"として注目されているのが、健康な人の便を十二指腸に注入する便移植。健康な人の便にある正常な腸内細菌を注入することで、より早く乱れた腸内細菌のバランスが正常になるとされる。

 実際に、ディフィシル菌による下痢に対しては、重い副作用もなく、抗生物質よりも低コスト・短時間で治ったとする報告がある(関連記事:下痢治療の切り札は「他人の便」? 標準治療上回る効果)。

便の提供者選びには"肥満なし"も考慮を

 今回、娘の便移植を受けた女性は、別の感染症に対して抗生物質を服用した後、2~3週間続く下痢と腹痛によって病院を訪れた。ディフィシル菌への感染と診断され、さらに抗生物質を服用して一時的に改善したものの、重い下痢が再発したため、10歳代の娘の提供による便移植を受けた。娘は肥満気味な以外、健康的な問題はなかったとされている。

 女性の体重は138ポンド(約63キロ)で、BMI(肥満指数)は標準範囲内に近い26(日本の基準では肥満1度)。過去にそれ以上の体重になったことはなかったという。ところが、便移植の1年4カ月後,女性の体重は170ポンド(約77キロ)、BMIは33(同肥満2度)に増え、食事や運動をしたにもかかわらず、便移植の3年後には体重177ポンド(約80キロ)、BMIは34.5(同肥満2度)までさらに増加した。

 報告者の一人である米ブラウン大学ミリアム病院のコリーン・ケリー氏は、この症例について「便移植によって、善玉菌の一部が女性の代謝機能に悪影響を与えたのではないか」と考えている。これまでの研究で、肥満のマウスの便を移植することで普通の体重のマウスも肥満になることが分かっていることからも、便移植をするなら提供者の健康状態だけでなく、肥満かどうかも考慮することが望ましいとした。なお、提供者によって糖尿病やメタボリックシンドロームも治る可能性が示されている(関連記事:「他人の便」で糖尿病やメタボも治る? 米医学誌論評)。

(編集部)

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