2015年03月16日 10:30 公開

ワクチンは副作用が強くて危険!? ―その1―

小児科医がズバリ答えます!ワクチンに関する5つの疑問 第2回

〈編集部から〉
 十分な治療法がなく、死亡や重い障害を残す感染症は少なくありません。これまで人類とウイルス、細菌との闘いが繰り広げられてきた中で、最も強力な武器の一つといわれるのがワクチンです。「ワクチンは飲み水の浄化に次いで、多くの子どもの病気を防ぎ、命を救ってきた"医薬品界のスーパースター"」と話すのは、小児感染症の専門家、長崎大学小児科の森内浩幸教授。しかし、普段の診療において、子どもに付き添うママやパパ、おじいちゃん、おばあちゃんたちのワクチンに対する不安や誤解は根強いと感じることも少なくないようです。このシリーズでは普段、医師にはなかなか聞きにくいワクチンに関する5つの疑問を、6回にわたって解説してもらいます。森内教授は「正しい知識を持って、子どもを守るワクチンを上手に利用してほしい」と呼びかけています。第2回は「ワクチンは副作用が強く危険!? ―その1―」。

「ワクチン接種後に○○」は「ワクチンが原因で○○」ではない

 「ワクチンの接種で重い後遺症が残った人の話を聞きます。本当に安全なのですか?」という人もいます。日本では「ワクチンの接種でこんなに患者や死亡者が減りました」という報道よりも「ワクチンの接種後に突然死」「ワクチンの接種後に体の震え」といった報道が目に付きます。

 報道に関わる人、そして報道を見る人に分かっていただきたいのは「相関関係」と「因果関係」の違いです。例えば、「オーガニック食品の売り上げが増え、自閉症が増えた」というデータがあります。これらのデータからは、2つの出来事が同時に起きている、あるいは両者の変化に共通の要因がある可能性を示す「相関関係」は推定されます。しかし、「自閉症の原因はオーガニック食品の摂取」のように「因果関係」があるとは言えません。

 「相関関係」と「因果関係」が全く異なることを理解しないと、「ワクチン接種後に○○」=「ワクチンが原因で○○」という誤解はいつまでもなくなりません。

乳児期のワクチン増加が突然死に関連?

 もう一つ、日本でワクチンと関連付けられやすいのは、生後2~6カ月くらいまでの赤ちゃんに見られる乳幼児突然死症候群(SIDS)による「紛れ込み事故」です。SIDSは、健康と思っていた赤ちゃんが睡眠中に突然、呼吸が止まって亡くなるという原因不明の突然死のこと。乳幼児期に接種するワクチンが増える以前から、日本では赤ちゃんの死因の第3位を占めています。

 近年、乳児期の前半に四種混合(DPT-IPV)やヒブ、肺炎球菌、B型肝炎ウイルス、ロタウイルスなど、接種するワクチンが増えています。そんな中、赤ちゃんのワクチン接種後の突然死が、両者を関連付けるかのように大きく報道されることがあります。

 しかし、実は、国によるあおむけ寝や保護者の禁煙、母乳哺育といった予防策の推進が効を奏し、SIDSは年々確実に減少しています。本当にワクチンが突然死をもたらすのであれば、これだけ多くのワクチンを接種するようになった近年、SIDSは増えているはず。つまり、こうした報道は事実ではないのです。

「紛れ込み事故」を減らすために同時接種を

 先進国でも途上国でも、ワクチンで防げる感染症(VPD)をリスクの高い時期にきちんと予防するため、そして接種される子どもの負担や通院回数の負担などを考慮した同時接種が一般的に行われています。一方、日本では医師や保護者が「同時接種の後に何かあったら不安」という理由で、同時接種の普及が進んでいません。

 しかし、個別接種の回数が増えるほど、接種から1週間以内の「紛れ込み事故」に遭遇する確率が高まります。生後2~6カ月に必要な全てのワクチンを可能な限り同時接種すれば4回で必要な接種スケジュールが完了し「紛れ込み事故」の確率を最も減らすことができます。小児科医も保護者も同時接種に対する理解をもっと深めて欲しいと思います。

(まとめ/坂口 恵)

森内浩幸(もりうち ひろゆき)

 1984年、長崎大学医学部卒業。国立仙台病院臨床研究部レジデント、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)研究員、米国立衛生研究所(NIH)臨床スタッフなどを経て、1999年から長崎大学医学部小児科学主任教授。厚生労働省の予防接種・ウイルス感染対策関連の委員なども歴任し、子どもや女性の感染症対策に力を入れている。

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