2015年03月17日 10:30 公開

ワクチンは副作用が強くて危険!? ―その2―

小児科医がズバリ答えます!ワクチンに関する5つの疑問 第3回

〈編集部から〉
 十分な治療法がなく、死亡や重い障害を残す感染症は少なくありません。これまで人類とウイルス、細菌との闘いが繰り広げられてきた中で、最も強力な武器の一つといわれるのがワクチンです。「ワクチンは飲み水の浄化に次いで、多くの子どもの病気を防ぎ、命を救ってきた"医薬品界のスーパースター"」と話すのは、小児感染症の専門家、長崎大学小児科の森内浩幸教授。しかし、普段の診療において、子どもに付き添うママやパパ、おじいちゃん、おばあちゃんたちのワクチンに対する不安や誤解は根強いと感じることも少なくないようです。このシリーズでは普段、医師にはなかなか聞きにくいワクチンに関する5つの疑問を、6回にわたって解説してもらいます。森内教授は「正しい知識を持って、子どもを守るワクチンを上手に利用してほしい」と呼びかけています。第3回は「ワクチンは副作用が強く危険!? ―その2―」。

「80人に1人」と「2,000人に1人」

 もちろん、ワクチンは100%安全ではありません。しかし、そもそも100%安全なものがこの世に存在するのでしょうか。こんな例があります。日本では1989年に麻疹(はしか)とムンプス(おたふくかぜ)、風疹(三日ばしか)に対する3種混合ワクチン(MMRワクチン)が使用されていました。ただ、当時使われていたワクチンには、無菌性髄膜炎の副反応(副作用)があることが分かったんです。

 無菌性髄膜炎はおたふくかぜの合併症の一つです。おたふくかぜを引き起こすムンプスウイルスに自然感染した場合、約80人に1人が入院を必要とするほどの無菌性髄膜炎を発症するのに対し、当時のワクチンでの頻度は500~1,000人に1人。自然感染よりもはるかに少ないことが分かっています。

 しかし、当時は「(ムンプスワクチンが含まれている)MMRワクチンは危険」とセンセーショナルに報道されるなどして、93年に使用が中止されました。さらに今、任意接種で使われているワクチンは中止されたものとは別で、重い無菌性髄膜炎の発生率は2,000~2,500人に1人です。

かかったら抗生物質飲めばいい?

 現在、先進国で全ての子どもにムンプスワクチンを推奨していないのは日本だけです。そんな日本で「おたふくかぜは髄膜炎だけでなく、1,000人に1人の割合でムンプス難聴という合併症を起こす」という研究成果が発表されました。

 昔は、ムンプス難聴の頻度は「1~2万人に1人」と考えられていました。しかし、この精密な研究により、ムンプス難聴の実際のリスクはより重大だと分かったのです。海外の予防接種の専門家はこの"成果"に対し、「ワクチンがあるのに、子どもをおたふくかぜにかからせて多くのムンプス難聴を発生させているなんて、日本は(ワクチンの効果について)聞く耳を持たないのか」と、われわれにとって耳の痛い論評を発表しました。

 「ワクチンは怖いし、感染症にかかったら抗菌薬(抗生物質)で治せばいいでしょう」と言う人もいます。でも、ウイルスによるものなど抗菌薬が効かない感染症が多いだけでなく、抗菌薬の副作用の頻度はワクチンよりもはるかに高いと考えられます。

 毎年、日本では医薬品の使用に関連した重い発疹(重症薬疹)による死亡が50件近く報告され、抗菌薬はその原因薬の上位を占めています。抗菌薬には他にも、アナフィラキシーショックなど命に関わる副作用が見られることもまれではありません。

ワクチンの副反応より怖いものとは?

 実は、子どもにとってもっと危険で、小児科医が怖いと感じるものは他にあります。家の風呂で毎年100人もの赤ちゃんが溺死していますし、餅やあめなどを喉に詰まらせて亡くなる人も毎年4,000人以上発生し、その多くは高齢者や小さな子どもです。自動車の危険運転で通学中の子どもが死傷したというニュースも目にします。

 でも、過去のワクチンに関する報道のように「こんなに子どもが亡くなっているから、子どもの風呂や餅を法律で禁止すべき」「自動車は危険運転をする人がいるから全面的に免許制度を中止すべき」などという報道は目にしません。

 ワクチンで防げる感染症(VPD)の多くは、非常に危険な病気です。ワクチンの副反応(副作用)だけでなく、VPDによる被害の恐ろしさ、ワクチンで期待できる効果をてんびんにかけて考えることが重要です。

(まとめ/坂口 恵)

森内浩幸(もりうち ひろゆき)

 1984年、長崎大学医学部卒業。国立仙台病院臨床研究部レジデント、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)研究員、米国立衛生研究所(NIH)臨床スタッフなどを経て、1999年から長崎大学医学部小児科学主任教授。厚生労働省の予防接種・ウイルス感染対策関連の委員なども歴任し、子どもや女性の感染症対策に力を入れている。

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