2015年04月02日 06:00 公開

外見では分からない双極性障害患者の苦しみ、当事者らが講演

病気とは別の悩み

 毎年3月30日は「世界双極性障害デー」。病名を聞いてもピンと来ない人も多いようだが、これはかつて「躁(そう)うつ病」と呼ばれていた精神疾患の一つだ(関連記事=双極性障害ってどんな病気?)。外見からは病気と見られず健康と勘違いされたり、治す気持ちがあるのかと問い詰められたり...。この病気に対する正確な知識と理解がないために、患者は病気とは別の苦しみを抱えている。今年から、わが国でも日本うつ病学会がイベントなどを通じてこの病気の認知度や理解度の向上を目指していく。3月27日には東京都内でメディア懇親会が開かれ、双極性障害の患者団体主宰者など3人の当事者が講演を行った。

周囲の"無理解"という苦しみ

 双極性障害では、躁状態とうつ状態の2つの相反する症状が交互に繰り返されたりするため、正確に診断をするのが難しいといわれる。実際、最初の症状が出てから双極性障害と診断されるまでに平均9.6年かかるというデータもある。

 診断がついて治療が始まっても、薬による副作用が出たり、症状が安定せずに会社や学校を長期にわたって休んだりせざるを得ないケースも少なくない。それらに加え、外見だけでは病気とは分かりにくいことから、周囲の冷たい言葉にも苦しめられることもある。

 日本うつ病学会の尾崎紀夫理事長(名古屋大学大学院医学系研究科教授)によると、「病気に見えない」「弱いから病気になる」「治す気があるのか」といった言葉が、家族などから患者に向けられるという。この病気に対する正しい知識がないことによる理解のなさが見え隠れする。

病気による孤独感と病気への感謝の気持ち

 双極性障害の患者団体、NPO法人「ノーチラス会」(東京都品川区)の会長である芳賀佳奈恵さんは、ツイッターやフェイスブックといったソーシャルネットワーキングサービス(SNS)が、患者にとって孤独感を乗り越える重要な手段にもなっていると話す。普段はカウンセリングを行う立場にいるが、自らも双極性障害である芳賀さんは「うつ状態で何もできないときには、スマートフォンを握りしめて布団の中にこもることがある。(SNSを通して)ほぼリアルタイムで、同病者ならではのアドバイスをしてもらえた」と、SNSの利点を強調した。

 閉鎖病棟での入院生活や、薬の副作用による苦しみを体験してきた清野さやかさん。「医療には限界があり、生活に重きを置いた支援が大切。十分な人権への配慮の重要性を学んだ」という。その後、精神保健福祉士の資格を取り、患者と医療者との橋渡し役として福祉の現場で活動してきた。現在は、躁状態で一人旅に出た長野県を再訪した際に知り合った男性と結婚し、「双極性障害が度々もたらしてくれるエネルギーのおかげで、良きご縁や出会いに恵まれ、感謝している」と微笑む。

 別の形で医療に貢献しようとするのは、双極性障害患者として半世紀ほどを生きてきた、品川区精神障害者当時者会「年輪の会」会長の佐藤諦吉さんだ。ノーチラス会の創設者でもあり、これまでさまざまな活動を行ってきたが、病気に関する詳しいメカニズムはいまだに解明されず、根本的な治療法も開発されていない。昨年、「死後に自分の脳を研究に使ってもらいたい」との思いから、福島県立医大などが運営する精神疾患のブレインバンクに登録した。

 自身も双極性障害患者として治療を続けながらも、患者団体を運営したり、医療者として貢献したりしている3氏。今回、日本うつ病学会の趣旨に賛同し、実名で講演を行い、病気による苦しみを訴え、社会の理解を求めた。一方で、病気によって得られた人脈や、人生そのものへの感謝の気持ちも表明した。なお、社会の無理解がもたらす双極性障害患者の苦しみを取り除くため、今後も同学会ではイベントなどを行っていくとしている。

(松浦 庸夫)

更新履歴:
4月5日 清野さやかさんのプロフィールの一部を変更しました。

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