2015年04月03日 10:30 公開

広がる母乳ネット販売に「待った」、研究者ら規制呼びかけ

感染症や異物混入のリスクも

 赤ちゃんには母乳の栄養が一番。近年は与える側の母親にも多くの利点があることが分かってきたが、一方で母乳育児ができない場合もある。こうした母親をターゲットに最近、急速に広がっているのが、オンライン上での母乳の売買だ。こうした動きに対し、規制を呼びかける論評が英医学誌「BMJ」(2015; 350: h1485)に掲載された。論評を執筆した英ロンドン大学クイーンメアリー校バーツロンドン医科歯科大学院のサラ・スティール氏ら英米の研究者らは、ネット販売される母乳には感染症や異物混入のリスクもあることを指摘。乳児を危険にさらすことになると強調している。なお、こうした母乳販売サイトは、国内にも複数ある。

母乳育児うまくいかない母親の4分の3がネットで情報収集

 母乳にはさまざまな利点があることが知られている。最近は、新生児3,500人を30年追跡調査したところ、母乳育児の期間が長いほど30歳時のIQ(知能指数)や教育レベル、収入が高かったとする研究結果も報告されている(「Lancet Glob Health」2015; 3: e199-205)。

 世界的に母乳育児が推進される中、スティール氏らによると、何らかの理由で母乳育児ができない母親の4分の3が、医療従事者ではなくインターネットにアドバイスを求めているとの報告があるという。

 こうした母親がネットでの情報収集を通じて見つける可能性があるのが、オンライン上で母乳の交換や売買を行うサイトだ。こうしたサイトは、医療機関などが運営する母乳バンクの適格者から外れる母親でも利用でき、母乳バンクに比べて安価なことから利用が広がっている。

 しかし、スティール氏らは「ネット上での母乳の売買は危険をはらむ。ネットで購入した母乳を飲んだ乳児が健康を損なう恐れがある」と指摘。厳格な基準を満たした母乳バンクとは異なり、ネット売買される母乳では低温殺菌や病原体、汚染物質などの検査が行われておらず、保管状態や配送手段などにも問題がある場合が多いと説明している。なお、国内では昭和大学医学部小児科(東京都品川区)が母乳バンクを設置している。

2割がウイルス感染との報告も

 ネット販売されている母乳の問題を示す報告は多い。例えば、ネットで購入した母乳の21%がサイトメガロウイルス陽性だったとする報告や、細菌の増殖が確認されなかったサンプルは101件中9件のみだったとの報告がある。サイトメガロウイルスは、通常の赤ちゃんが感染してもほとんど発症しないが、早産児や低出生体重児の場合、肝機能異常や間質性肺炎などの重い状態になることもあるという。

 さらに、ネットで購入した母乳の25%が梱包に問題があり、配達された際に凍結状態ではなかったことや、かさ増しのために牛乳や水を混ぜていたことも報告されている。

 スティール氏らは、母乳育児がうまくいかない女性に対し、母乳のネット購入よりも安全な授乳の選択肢について情報提供すべきと主張。母乳の安全性と質を確保するため、法規制の導入を含めた対策が急務と述べている。

(編集部)

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