2015年06月02日 10:30 公開

3Dや大画面の「映像酔い」、仕組みの一部判明―京都大ほか

快適な映像技術の開発に期待

 近年は大画面のディスプレーや3次元(3D)などの臨場感のある映画が身近になっているが、映像を見て気分が悪くなる「映像酔い」になる人が後を絶たない。京都大学大学院人間・環境学研究科の山本洋紀助教やキヤノンの宮崎淳吾研究員らの研究グループは、映像に酔うと映像の動きを検出する脳の一部の活動に異変が起こることを発見し、5月28日発行のドイツ脳科学誌「Experimental Brain Research」(電子版)に発表した。映像酔いをしない、安全で快適な臨場感のある映像技術の開発に期待がかかる。

2つの仮説に関わる脳の領域に着目

 映画やテレビ、ビデオゲームなどである種の動きを含んだ映像を見ると目の痛みや吐き気、目まいといった不快感を伴うことがある。この症状を「映像酔い」と呼び、医学的には車酔いや船酔いなどの乗り物酔い(動揺病)の一つと考えられている。酔いそうな映像は見ないのが一番だが、そんな映像ほど人の目を引きつける。

 映像酔いが起こる仕組みは明らかではないが、目の動きが原因の眼球運動説と体の動きと目からの情報が矛盾する感覚矛盾説が有力な仮説で、どちらにも脳の視覚に関する領域(視覚野)の「MT+野」が関わることが分かっている。

 MT+野は左右両方の脳にあるが、機能的にも解剖的にも左右に差があることが報告されている。研究グループは、映像に酔うと左右のどちらかに異変が生じ、これが体のバランスに関わる脳の領域を刺激して映像酔いが起こすのではないかと考えた。

乗り物酔いの原因解明にも期待

 実験では14人に映像酔いを起こしやすい動画(酔動画)と起こしにくい動画(非酔動画)を見せ、MRIで脳活動が左右でどのくらい違うのかを調べた。被験者のうち8人は酔動画を見た時に映像に酔い、残りの6人はどちらの動画を見ても酔わなかった。

 その結果、映像酔いしたグループは、非酔動画を見た時はMT+野の左脳と右脳の活動が似ているが、酔動画を見ると左右の脳の活動が異なっていた。脳の他の視覚野(V1、V2、V3、V3A、V7)では左脳と右脳の間の活動の違いは認められず、映像酔いしなかったグループでは脳の活動の違いが2つの動画で差が見られなかった。つまり、映像に酔った人たちのMT+野のみで左脳と右脳で活動に差があることになる。

 この結果について、山本助教らは「映像酔いの神経メカニズムを理解する糸口になると考えています」とコメント。映像酔いだけでなく、乗り物酔いの原因も解明できることに期待を寄せている。

(あなたの健康百科編集部)

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