2015年06月16日 17:30 公開

虫歯や歯周病は「口の中の感染症」、リウマチ患者は要注意

神戸大リウマチ患者教室

 関節リウマチの治療では、免疫を抑える薬を使うため、感染症に注意が必要だ。風邪や肺炎などはもちろんだが、「口の中の感染症」である虫歯や歯周病にも気をつけなければならないのはご存じだろうか。5月21日に神戸大学整形外科で開催されたリウマチ教室「リウマチとお口の管理の必要性」(司会=同科・三浦靖史准教授)では、同大学歯科口腔外科の歯科衛生士、西井美佳氏が、特に関節リウマチ患者では口の中を清潔に保つことの大切さをレクチャーした。

虫歯を放置すると細菌が全身に

 口の中の病気と言えば、真っ先に思い浮かべるのが虫歯や歯周病だろう。虫歯は、口の中の細菌が食べかすや歯垢(しこう)などから酸を作って歯の表面(エナメル質)を溶かし、穴が空いてしまう状態。そのまま放置すると歯の内側(象牙質)まで進み、痛みを感じるようになる。さらに放置すれば、歯髄という神経部分にまで及んでさらに強い痛みに。それでもまだ放っておくと、神経がダメになってしまう。そうなると痛みは消えるが、血管を通って細菌が全身に回ってしまうこともある。

 歯周病は、歯と歯茎の境目に歯垢がたまって細菌が増えると、歯茎が腫れる歯肉炎になってしまい、歯磨きするときに歯ブラシを当てると出血するようになる。放っておくと歯と歯茎の境目の歯周ポケットが徐々に深くなって歯を支える歯槽骨が徐々に壊れていき、最終的には歯が抜けてしまう。

 いずれも細菌が原因で、「口の中の感染症」と言える。関節リウマチで一般に使われる治療薬のメトトレキサート(MTX、商品名「リウマトレックス」ほか)や生物学的製剤、ステロイド薬には免疫を抑える作用があるため、患者は口の中にトラブルを抱えるリスクが高くなる。つまり、風邪や肺炎などの感染症と同じく、関節リウマチ患者では特に注意が必要になるという。

リウマチの治療を始める前に口の中をチェック!

 MTXを服用していると、口内炎や血小板減少に伴う歯肉からの出血が副作用として出てくる場合がある。また、生物学的製剤は、重い感染症を合併している患者では使えないので、重い虫歯や歯肉炎・歯周病がある場合、口の中の治療を終えてからでなければ治療を始められないこともあるのだ。

 ステロイド薬を服用している場合も、カンジダというカビの一種が増えることで起こる口腔カンジダ症が出やすいため、注意が必要だ。口腔カンジダ症になると、舌にピリピリした痛みを感じて味を感じなくなったり、喉がイガイガしてのみ込みにくくなり、食欲が低下してしまう。

口の中の"整理整頓"が必要なことも

 関節リウマチ患者は骨粗鬆症(こつそしょうしょう)にもなりやすいため、治療薬のビスホスホネート製剤を使うこともあるが、その薬を使うことで顎の骨が壊死する(顎骨壊死)リスクが高まるという。

 なぜ、顎骨壊死が起きるのだろうか。その仕組みについて、西井氏は「虫歯の治療などで歯を抜くと歯茎に穴が空いてしまいますが、その穴に血液がたまって血の塊(血餅=けっぺい)ができることで徐々に穴がふさがり、歯茎と顎の骨が再生されます。しかし、骨を強くする作用を持つビスホスホネート製剤を服用していると再生が滞ってしまい、抜歯による穴に細菌が感染して顎の骨を壊してしまうことがあるのです」と説明した。

 そのため、抜歯する前には3カ月間、さらに抜歯後も回復するまでの3カ月間、ビスホスホネート製剤の服用を中止しなければならない。合計で半年間も服薬できないため、その期間に骨粗鬆症が悪化してしまうのではないか、不安になるだろう。

 「途中で服薬をお休みするのは大変なので、ビスホスホネート製剤を飲み始める前に、口の中を"整理整頓"しておく必要があります」と西井氏は言う。見た目には健康に見える歯でも、歯の根っこ(歯根=しこん)に問題があって長期的に見ると抜歯すべき歯がある場合は、治療したり歯を抜いたりするなどの準備が必要となるのだ。

 「せっかく良い薬があるのに、速やかに治療を始められないのはもったいないと思いませんか? リウマチの治療を始めるためには、日頃から口の中をキレイに掃除しておくことが、実はとても大切なのです」(西井氏)

うがい液や保湿ジェルで口の中の乾燥を防ぐ

 関節リウマチ患者の中には、口の中が乾燥しやすいシェーグレン症候群を合併している人も少なくない。唾液は口の中を清潔に保ったり粘膜を保護したりするなどの役割を担っているので、口の中が乾燥するとのみ込みにくくなったり、細菌が増えやすくなったりするため口腔カンジダ症や虫歯、歯周病の悪化につながりやすい。

 「口の中の乾燥を防ぐことが大切。最近はうがい薬や保湿ジェルが市販されています。日中は食事や会話など、口を動かすことが多く、比較的唾液は出やすいのでうがい液を、就寝時は特に口の中が乾燥するので保湿ジェルを使うとよいでしょう」と西井氏はアドバイスした。

(長谷川 愛子)

神戸大学整形外科リウマチ教室
 神戸大学整形外科では、関節リウマチ患者が自分の病気についての理解を深め、より良い療養生活を営めるアドバイスを伝える目的で、2003年から毎月1回、同大学病院で患者教室を開講している。同院に通う人だけでなく、他の医療機関や診療科で治療を受けている関節リウマチ患者、患者の家族、医療関係者など、関節リウマチに関心を寄せる全ての人に門戸を広げている。

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