2015年06月17日 06:00 公開

「高齢者」の定義見直しへ、年度内に正式発表

近年の“若返り”考慮して―日本老年学会

 日本は世界保健機関(WHO)や他の先進国と同じく、65歳以上を「高齢者」と定義している。しかし、10~20年前と比べて若々しい高齢者が増えており、それは日本で行われた調査でも裏付けられているという。こうした中、日本老年学会の甲斐一郎理事長は6月12日、横浜市で開かれた同学会の会合で、「高齢者」の定義を見直すと報告した。本年度内をめどに正式発表するという。

10~20年前より5~10歳若い

 日本では現在、65~74歳を「前期高齢者」、75~89歳を「後期高齢者」、90歳以上を「超高齢者」と定義している。日本の人口構造が劇的に変わる中、1990年には1人の高齢者を5.1人の生産人口(20~64歳)で支えていたが、2012年は2.4人、2060年には1.2人で支えるようになると予測されている。

 同学会によると、高齢者の定義見直しには、現在、定義に入っている年齢の人が以前に比べて若々しいことのほか、社会の支え手を増やして活気のある高齢社会を築く意義もあるという。見直しに当たり、国民の意識調査や病気の構造、体・心理・社会機能の変化について検討を重ねた上で、以下のような声明を発表した。

◆日本老年学会からの声明(要旨)
 最新の科学データでは、高齢者の身体機能や知的能力は年々若返る傾向にあり、現在の高齢者は10~20年前に比べて5~10歳は若返っていると想定される。個人差はあるものの、高齢者には十分、社会活動を営む能力がある人もおり、このような人々が就労やボランティア活動など社会参加できる社会をつくることが今後の超高齢社会を活力あるものにするために大切である。

国民意識調査では「70歳から」

 2014年に実施された内閣府の意識調査では、高齢者を「70歳から」と捉える人が増えていた。過去17年間の調査結果を見ると、「何歳からを高齢者とすべきか」の年齢が年々上昇していることが分かる。

 また。東京大学医学部附属病院の秋下雅弘教授(老年病科)らの調査によると、65~79歳の人が脳卒中や骨折、肺炎などで治療を受ける割合が1995年から徐々に下がっており、これらの病気による死亡率や要介護認定率も同じく低下していたという。秋下教授は「生物学的に5~10歳の低下が示唆される」と考察している。

 さらに、国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)の鈴木隆雄・理事長特任補佐は、高齢者の健康度や身体機能が高まっていることを受け、2013年に高齢者の生活機能を評価するツール「新活動能力指標(JST版 」を開発した。1986年版の「老研式活動能力指標」と比べると、チェック項目の数や内容からも、現在の高齢者は能力が高まっていることが分かる。

 このほか、「最近の70歳代はかつての50~60歳代に匹敵するほど、心理的な老化の発現が遅くなっている」(日本大学文理学部心理学科・内藤佳津雄教授)や、「咀嚼(そしゃく=かみ砕くこと)機能に必要な20本の歯数を維持する年齢は徐々に向上し、昭和時代の65歳の歯数は今や80歳前後に相当する。歯数を前提にすれば高齢者の定義は変わる」(日本大学松戸歯学部・那須郁夫教授)といった研究結果に基づいた報告も行われている。

若返った高齢者は「生涯現役」であるべき?

 高齢者の"若返り"のエビデンス(科学的根拠となる研究結果)が次々と示される中、高齢者の社会参加についてあえて疑問を投げかけたのは、聖学院大学(埼玉県上尾市)人間福祉学部の古谷野亘教授だ。

 古谷野教授は、以前は「老人」と呼ばれていたのが「高齢者」に変わり、年齢による線引きを導入せざるを得なくなったと指摘。身体機能や認知機能の低下を遅らせることに異論はないものの、例えば高齢者が働き続けることが若年者の就業や高齢者自身の生き方に与える影響も考慮すべきとの問題を提起した上で、「社会生活の加齢変化は、遅らせるのが望ましいとは限らない」との考えを示した。

(あなたの健康百科編集部)

関連トピックス

関連リンク(外部サイト)

ファーマトリビューン(PharmaTribune)