2015年06月18日 10:30 公開

母親の知能が息子に遺伝するってホント? 東大教授に聞く

 知能に関わる遺伝子はX(エックス)染色体に乗っており、男の子は母親からだけX染色体をもらうので母親の知能を受け継ぐ―という説が、まことしやかにささやかれている。本当なのか、それとも単なる都市伝説なのか、東京大学大学院総合文化研究科の石浦章一教授(分子生物学)に聞いた。

そもそも知能は遺伝子で決まるのか

 石浦教授によると、遺伝的に知的障害がある家系を調べると、原因となる遺伝子がX染色体に乗っていることが多い。そのため、X染色体には何か知能に関係する遺伝子があるのではないかと、かつては考えられていたという。ここから、冒頭の説が浮上したようだ。

 その遺伝子を突き止めようと、十数年前からさまざまな調査・研究が行われてきた。頭の良い人に共通する遺伝子はないか、知能の高い人とそうではない人の遺伝子はどこが違うのか―。

 近年、ゲノムの解析技術が目覚ましく進歩し、ついに結論が出た。頭が良くなる遺伝子はなく、知能は遺伝子で決まるものではないことが分かったのだ。つまり、母親の知能が息子に遺伝することはない、というわけだ。

賢い母親の子供が賢いのはなぜ?

 だが、石浦教授は、一般に賢い母親の子供は賢いとは言えるとしている。例えば、東大生の家庭生活には、次のような共通の傾向が見られるという。

 親は常に家で勉強している、本がたくさんある、幼い頃から動物園や科学館などによく連れていってもらった、食卓を囲んで親といつも時事問題などについて議論している...。

 これらの証言から、東大生の親は意識が高く、子供が小さい頃から知的好奇心を刺激する良い環境を与えていることが分かる。「賢い母親は、子供の能力を伸ばすようにうまく導くことができるので、子供が賢くなるのです」と石浦教授は指摘する。

知的生活習慣が決め手

 人間の脳細胞の数は5~6歳で決まる。そのため、胎児のときからこの年齢までは、栄養バランスの良い食事を与えることが最も大切だという。

 その後、不要な脳細胞は少しずつ消去され、重要なものだけを残して10歳ぐらいまでに神経回路が作られる。5歳からこの時期までに心がけたいことは、多様な経験をさせることだ。といっても、特別なことをする必要はないそうで、本の読み聞かせや虫捕り、楽しいコミュニケーションなど、何気ない日常生活の積み重ねが大切だという。

 「遺伝ではなく、栄養やさまざまな経験、良い環境、知的生活習慣などが、知能の発達に大きく寄与するのです」(石浦教授)

努力した時間で人生は決まる

 では、遺伝は全く関係ないのかというと、そういうわけではなく、気質は遺伝するという。気質といえば、あの人は怒りっぽいとか涙もろいといった、喜怒哀楽に関わる傾向と思われがちだが、それだけではない。新奇性探究(好奇心が強い)、持続力、神経質、人間的な温かさなども気質に含まれ、遺伝的な要因があるといわれている。気質は、後天的に作られる性格とは異なり、生まれつきのものだ。

 しかし、どんな気質であろうと、「最終的には努力した時間で人生は決まります」と石浦教授。最近は共働きの家庭が多く、お母さんは非常に忙しいが、30分でもいいから子供と向き合い、心や手をかけてあげると知能は伸びると助言している。

(津田淳子)

関連トピックス

関連リンク(外部サイト)