2015年07月06日 06:00 公開

"胃がんワクチン"の効果確認、6~15歳が対象―中国研究

ピロリ菌の感染を予防

 ピロリ菌(Helicobacter pylori)は胃がんの原因の9割以上を占めるとされており、日本では2013年に慢性胃炎の人の除菌でも健康保険が使えるようになった。とはいえ、胃がんを防ぐならば、ピロリ菌に感染しないことが最も重要だろう。中国食品医薬品検定研究院(NIFDC)のジェン・ミン氏らは、6~15歳を対象に行った飲むタイプのピロリ菌ワクチンの研究で、1年後のピロリ菌感染予防効果が示されたと、6月30日発行の英医学誌「ランセット」(電子版)に報告した。ピロリ菌ワクチンの効果が確認されたのは初めてのことで、オーストラリアの専門家は「胃がん予防ワクチン実用化に向けた大きな一歩」と評している(関連記事:ピロリ除菌、胃炎でも保険適用へ―「胃がん撲滅元年」に)。

子供の頃からの感染予防が重要

 胃がんや胃潰瘍、胃炎などの原因となるピロリ菌は、日本では50歳以上の半数以上が感染しているほか、子供の5~10%が保菌している。主な感染経路は、乳幼児期に保菌している親や祖父母が食べ物をかみ砕いて食べさせることといわれている(関連記事:乳幼児のピロリ菌感染、食物の口移しが主な原因に)。

 日本だけでなく、世界的に保菌者への除菌が行われているが、(1)耐性菌の出現、(2)除菌が無効な症例がある、(3)除菌しても胃がんリスクが高いまま―といった課題が残されている。そのため、子供の頃からピロリ菌の感染自体を防ぐワクチンの開発が進行中だ。

 ジェン氏らは2004~05年、中国江蘇省のカン楡(ゆ)区にある1施設で、ピロリ菌に感染したことのない6~15歳の子供を対象に臨床試験を実施。効果が全くないプラセボ(偽薬)ワクチンを3回飲むグループと、ピロリ菌ワクチンを3回飲むグループに分け、最終的に2グループ合計で4,403人が接種を完了した。

副作用も極めて少ない

 解析の結果、1年以内にピロリ菌に感染した人数はワクチンのグループで少なく(プラセボグループ=2,089.6リスク人年当たり50件、ワクチングループ=2,074.3リスク人年当たり14件)、ワクチンの有効性は71.8%と算定された。

 また副反応(副作用)は、プラセボグループで161人(7%)、ワクチングループ157人(7%)。重い有害事象(ワクチンとの因果関係が証明されていない副反応)の報告率は両グループとも1%未満で、ジェン氏らは「いずれもワクチンとの関連は考えられなかった」と報告している。

胃がん予防効果の確認にはさらなる調査必要

 ジェン氏らは、今回の研究からピロリ菌に感染したことのない子供へワクチンを接種することの有効性と安全性、免疫原性(体に抗体を作らせる性質)が確認されたと結論。このワクチンを使うことでピロリ菌感染率が下がると期待されるものの、胃がんなどピロリ菌に関連する病気の予防効果を確認するには、長期間の追跡調査が必要としている。

 オーストラリア・ロイヤル・チルドレンズ病院のフィリップ・サットン氏は、同誌の論評(電子版)で「ワクチンで人のピロリ菌感染が防げることを示した初の試験だろう」と評価した。

 一方で、実用化に当たっての課題として、ワクチン接種前に2時間の絶食と緩衝液(水素イオン指数=pH=を安定させる液体)が必要なこと、アジュバント(添加物、LT-B)が承認審査の際に懸念材料となる可能性を挙げている。

(あなたの健康百科編集部)

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