2015年08月24日 06:00 公開

菜食主義で体調悪化!? マクロビオティックの問題点

ある実践者の手記から

 2015年2月末、とあるマクロビオティック実践者が「僕が菜食をやめた理由」という記事をブログに投稿し、話題となった。約9年半にわたり菜食主義を続けたにもかかわらず、健康状態は悪化していき、ついに「この方法は間違っている」と気付くに至った経緯が記されていたのだ。12回に分けて投稿された菜食主義、マクロビオティックとの決別記事は大きな反響を呼び、40万ビューを超える閲覧数を記録。筆者・藤原悠馬さんが語る菜食主義の問題点とは何だろうか―。

マクロビ専門店を開業も体調悪化に悩む日々...

 ブログ「しあわせごはんとおやつneem」を運営(現在は新ブログへ移行)していた藤原悠馬さんは、22歳の頃から菜食主義を取り入れ、半年後には完全菜食、いわゆる「ビーガン」に。ビーガンとは食べるものだけでなく、身に着けるものまで動物性のものを避けるベジタリアンのことだ。また、マクロビオティックという穀物と野菜中心の健康食事法を実践し、5年目にはマクロビオティックの専門飲食店を開業する。

 しかしこの頃から、藤原さんの体調は悪化し始める。大量の発汗に疱疹(ほうしん)、体臭がきつくなる、白砂糖を絶っているのにやたらと虫歯にかかる。インフルエンザや風邪にもかかりやすくなり、強い空腹感や集中力の欠如を伴う低血糖症の症状も出始めたという。その後、オーストラリアへ移住して農業を始めるが、そこで急性膵炎と鉛中毒を発症し倒れるという経験をする。

 肉や白砂糖を取らない健康的な菜食を行っているのに、ジャンクな食事をする周囲の人ではなく、なぜ自分だけが体調不良を起こすのか...。そんな疑問を抱いた頃に、肉食を推奨するある医師の意見にはっと気付かされたという。いわく「人類700万年の歴史の中で、穀物を栽培し始めたのはわずか1万年程度」。人類が病気に悩み始めるのは、穀物を食べるようになってからだというのだ。

マクロビの"教え"を盲信?

 この菜食主義やマクロビオティックとは正反対の主張を最初は疑うが、実際にそれまで絶っていた肉や魚、卵、チーズなどタンパク質と脂質を多く含むものが中心の食生活に変えてみると、これまで悩まされてきた体調不良が改善したという。これまでの体調不良は、菜食による栄養失調が原因だったようだ。

 マクロビオティック実践中も、同じく菜食中心の生活をする同志たちが体調不良で悩む姿を見て「なぜだろう?」と疑問は感じていた。しかし、マクロビオティックの教えをいわば宗教的に盲信していたために、そもそもマクロビオティックの理論が破たんしているのだとは考えなかった。

 また、マクロビオティック食の料理店や弁当屋を営んでいた頃は、食事を届けることで健康が(一時的に)回復する顧客の姿も見ていた。しかし、菜食による食事改善を試みる顧客は、そもそも不健康でバランスの悪い食事をしているケースが多かった。そのため、マクロビオティックを始めた直後は良い効果も出るが、長期間続けていくうちにやはり別の体調不良に陥ることが多かったという。顧客や同志たち、そして自分自身が陥る体調不良の数々に、ついにマクロビオティックを捨てる決心をしたのだ。

砂糖を絶っても低血糖症になる理由

 藤原さんは現在、オーストラリアから帰国し、建築のワークショップを受けながら、新たな道として整体師を目指して勉強中だという。ブログでの告白には大きな反響があり、中にはビーガンと思われる人から「悪いのは菜食主義ではなくマクロビオティックだ」といった批判もあったというが、これに藤原さんは「健康そうに見えるビーガンは少ない。自分では健康だと言うがそうは見えない」と反論する。

 現在の食事は「動物を食べることでしか摂取できない栄養もある」と、バランスの良い食生活を心がけているそうだ。結局のところ、健康な食生活とは「多くの栄養素をバランス良く摂取する」ことに尽きる、ということなのだろう。

 藤原さんと同様にマクロビオティックに傾倒しつつ、膵臓(すいぞう)がんを患ったのが、米アップル共同創業者の故スティーブ・ジョブズ氏。彼ががんに侵されていることが判明したとき、すぐに手術を受けていれば完治する可能性が高かったそうだが、なぜか9カ月も手術を拒み続け、結局、帰らぬ人となった。最終的に、ジョブズ氏はすぐに手術を受けなかったことを後悔していたという。

 また米国がん協会(ACS)は、マクロビオティックに対して「玄米と水のみを摂取するというような古典的なタイプのマクロビオティックは、深刻な栄養失調と死に直結する」と警告。特にがん患者の場合は、栄養素やカロリーを摂取してがんに対抗することが必要な場合もあり、この場合のマクロビオティックは「危険である」と注意を喚起している。

 マクロビオティックが、がんを発症させるという因果関係は判明していないが、少なくともマクロビオティックを実践していてもがんにかかることはあるし、発症後はより危険を伴う可能性もあるということになる。ちなみに、マクロビオティックを広めた第一人者である久司道夫氏も、2014年末に89歳ではあるが、ジョブズ氏と同じ膵臓がんで亡くなっている。

 なお、藤原さんは菜食主義やマクロビオティックとは決別したものの、「サトウキビ栽培(砂糖)は無駄」と断言する。ミネラルとビタミンを体から奪って免疫力を低下させ、過剰なインスリン分泌を招いて問題を起こす砂糖は、摂取するメリットよりもデメリットの方が遥かに大きいとし、砂糖を作るためのサトウキビが世界最大の生産作物となっていることを問題視している。

 現在も根強くささやかれている説に、「白砂糖有害論」がある。藤原さんもこの説を信じて砂糖は取らなかったが、それでも砂糖を多く取ったときにかかりやすくなるという低血糖症に悩んだ。その原因は玄米食にあり、白砂糖も玄米も体内で分解されれば同じくブドウ糖と果糖になる。そして穀物、特に玄米を中心とした食生活は、砂糖を大量摂取しているのと変わらず、糖分過多となってしまう。

 これは、白砂糖を危険視する人々が推奨する黒糖や蜂蜜でも同じことだ。こちらも結局は「過剰摂取は危険」「バランスよい摂取を」というところに落ち着くのではないだろうか。

(取材・文/佐藤圭亮)

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