2015年09月01日 06:00 公開

【寄稿】糖尿病患者の「朝食抜き」はOK? NG?

北里研究所病院糖尿病センター 山田 悟

〈編集部から〉
 ダイエット法や健康法として以前から賛否のある朝食抜きですが、近頃は健康への悪影響を指摘する声が強いようです。でも、カロリー制限をするならば、1日のうち1食を抜くのが最も手っ取り早い方法。では、食事制限を求められる糖尿病患者が朝食抜きを実践するのは、OKなのか、NGなのか。北里研究所病院(東京都港区)糖尿病センターの山田悟センター長に、最新の論文からその是非を読み解いてもらいました。

研究の背景:若者を中心に「朝食抜き」の多さが問題視されている

 わが国では、朝食を抜く習慣を持っている男女の比率は全体で14.4%(男性)、9.8%(女性)、20歳代ではそれぞれ30.0%、25.4%とされ(平成25年国民健康・栄養調査)、その比率の高さが問題視されている。

 しかし、その一方で、カロリー制限食(本来はエネルギー制限食と呼称すべきだが、習慣的にカロリー制限食と呼称されることが多い)の指導を受けてきた患者の中には、一番簡単にエネルギー摂取を落とすことができる方法として朝食抜きという選択をする人も少なくない。これまで、そうした患者に対して、「朝食は取るべきです」と是正を勧告すべきなのか、「カロリー制限を頑張っていますね」と継続を応援すべきなのか、私自身、分からずにいた。

 このたび、イスラエルのグループから朝食抜きと朝食ありでの血糖変動の相違がきれいに示され、朝食を抜くべきではないとされたのでご紹介したい(「Diabetes Care」7月28日発行号=電子版=)。

研究のポイント1: 1日3食 VS 1日2食

 この研究では、ヘモグロビン(Hb)A1cが7~9%で30~70歳、BMI 22~35の2型糖尿病患者が南米ベネズエラ・セントラル大学の糖尿病ユニットで募集された。交代勤務者、胃麻痺(まひ)、肥満手術を受けたことのある患者や、インスリン使用者、メトホルミン以外の内服薬を使用している患者は除外された。

 被検者はランダムに2つのグループに分けられ、1つは朝食ありでの検査を最初に受け、その2~4週後に朝食抜きでの検査を受けた。もう1つは朝食抜きでの検査を先に受け、その2~4週後に朝食ありでの検査を受けた。いずれの検査日も以下のスケジュールで進行した。

7:00 来院
7:30 採血用のカテーテル(管)を挿入
8:00 採血、朝食(朝食ありの場合のみ)
13:30 昼食
19:00 夕食
※採血は食事の直前と食後15分、30分、60分、90分、120分、150分、180分

研究のポイント2:朝食抜きでは昼食後、夕食後に血糖値が上がる

 2012年10月~2014年1月の試験期間中に26人の患者が登録されたが、そのうち4人が通院困難を理由に脱落したため、22人(男性12人、いずれも平均で年齢56.9歳、糖尿病期間8.4年、HbA1c 7.7%、BMI 28.2)が解析の対象となった。

 試験の結果、朝食後の血糖値やインスリンなどは朝食ありの場合で高かった。一方、昼食後は、昼食が同じ食事内容にもかかわらず朝食抜きの場合で血糖値が高く、インスリン、Cペプチド、iGLP-1が低く、FFAやグルカゴンが高くなっていた。

 また、夕食後もインスリンの最大値以外は昼食後と同じだった。要は、同じ食事を昼食に取ったとしても、朝食を食べていない場合には、インスリンの分泌が悪く、血糖上昇を抑え切れないということだ。

私の考察:自信を持って患者に「朝食を食べよう!」と言おう

 以前、朝食の摂取比率が高い人ほど体重が増えにくいとする「EPIC-Norfolk研究」(「American Journal of Epidemiology」2008; 167: 188-192)の結果が報告されたが、その後、朝食の摂取量が多いと、1日の総摂取エネルギーが大きくなるという論文(「Nutrition Journal」2011; 10: 5)が発表。朝食抜きで1日の摂取カロリーが少なくなる方が体に良いかもしれないなどと、私自身悩んでいた。

 しかし、今回の研究は、朝食抜きという食事法は、1日のカロリー摂取としては明確に3分の2になっていても、血糖管理には全く無効なことを示してくれた。毎食後の血糖値の曲線下面積(AUC)0~180分を足し算すると、朝食抜きの方が大きいくらいである。

 その理由として、朝食を抜くと、昼食時や夕食時のGLP-1分泌が少なく、インスリン分泌が弱く、グルカゴン分泌が多いというのが、今回の報告の重要な知見であろう。同様の結果は筑波大学のグループからも報告されており(「Obesity Research & Clinical Practice」2014; 8: e201-298)、朝食抜きという食事法が、少なくとも糖尿病治療としては不適切であることが明確になったと思う。

 一方、朝食抜きのカロリー制限が体重を増やすかどうかは不明であるにしても、少なくとも朝食抜きが(カロリー制限に成功していても)確実な体重減量法とは言えないことは確かだろう(「Physiology & Behavior」2014; 134: 51-54)。

 たとえ肥満であっても、糖尿病患者に対しては自信を持って「朝食を食べよう」と言うべきである。

山田 悟(やまだ・さとる)

 1994年、慶應義塾大学医学部を卒業し、同大学内科学教室に入局。東京都済生会中央病院などの勤務を経て、2002年から北里研究所病院で勤務。現在、同院糖尿病センター長。診療に従事する傍ら、2型糖尿病についての臨床研究や1型糖尿病の動物実験を進める。日本糖尿病学会の糖尿病専門医および指導医。