2015年10月02日 06:00 公開

9キロ減...榎木孝明さんの「不食」生活は実現可能なのか

 フジテレビ系ドラマ「浅見光彦シリーズ」などで知られる俳優で画家の榎木孝明さんが、約1カ月にわたって一切の食べ物を口にしない「不食」生活を送ったことが、ワイドショーなどで話題になった。食事制限や短期間の断食などはダイエット方法として知られているが、1カ月間もの食事制限となると、そもそも実現可能なのか? と感じる方も多いだろう。榎木さんが行った「不食」とは一体どんなものだったのか、そして健康への危険はないのだろうか? 安易にマネをしてはいけない「不食」についてまとめた。

水分・エネルギー補給はOKな「不食」とは?

 榎木さんが「不食」を行ったのは、2015年5月19日から翌月18日までの約1カ月間。榎木さんはこの間に一切の「食べ物」を取らなかったが、水分は特に制限なしで補給しており、また例外としてアメ玉はなめていたという。

 この「不食」は病院に泊まり込み、医者から健康チェックやアドバイスを受けながら行った。アメ玉をなめたのも糖分と塩分の補給を医者から勧められたためで、普通のあめのほかに塩あめも舐めていた。また、水分も水だけではなく、お茶やコーヒーも取っていた。食べ物だけではなく水分も一切補給しない場合、人間は3日と持たず死亡するといわれているが、逆に適切に水分と糖分などエネルギー源を補給していれば、1カ月間を過ごすこともできるのだ。

 そもそも榎木さんが「不食」に挑戦したのは、かつてアジア圏を旅した時に感じた「飲まず食わずの旅をすると、かえって元気になる」という体験を元にした実験のようなものだとしている。また、定義として「不食」とは「食欲と戦わずして食べない」行為で、宗教的な意味合いを持つ「断食」やダイエット、健康診断の直前などに医療目的で行われる「絶食」とも異なるという。何らかの目的を持って食事を絶つのではなく、ダイエット目的で行うことでもない、ということになる。榎木さんは無理に食事を制限したワケではなく、不食中に空腹感を覚えるようなこともなかったというから驚きだ。

 とはいえ、1カ月の不食を終えた榎木さんの体重は、開始時の80キロから71キロ、9キロのマイナスに。ダイエット経験があるなら、1カ月間で9キロ減はかなり過酷な体重減であることが分かるだろう。不食を終えた直後には記者会見も開かれたが、そこでの榎木さんは見るからに痩せており、「本当に大丈夫?」と体調を気遣われてもいた。

ダイエット失敗で起きる「リバウンド」は脳の仕業!?

 実際に1カ月間の不食を行った榎木さんの体には、どんな効果が現れたのか。明確に見て取れるのは体重の減少(マイナス9キロ)だが、人間の体は食事を取らずにエネルギー不足となると、まず体内の「筋肉」を燃焼させてエネルギーを補おうとする。一般的なイメージでは、食事を抜くと脂肪が減ると思いがちだが、真っ先に減るのは筋肉なのだ。

 他には栄養が足りず飢餓状態となることで、体の各機能が衰え代謝も悪くなる。この状態で運動しても、脂肪の燃焼効率が悪化する、つまり普通に食事をしている時よりも脂肪は落ちにくくなってしまう。

 美容・健康食品の研究を行う(株)本物研究所によれば、無理な絶食ダイエットを行うと「ストレスを感じた脳が過剰に栄養を要求する」ため、リバウンドが発生するという。自分の意思とは無関係に、生きるためのエネルギーを余分に蓄えようと、炭水化物や糖分を過剰に摂取したくなるよう脳が仕向けてしまうのだ。断食ダイエットを効果的に行うには、無理をせず短期間、特別なドリンクなどで栄養を摂取しながら行うことを推奨している。

 日本で唯一の公的な「断食道場」として知られる五色県民健康村健康道場(兵庫県)で行われている断食も、脳に「低カロリーの食事を覚えさせること」で過食を防ぐ方法が取られており、やはり脳が引き起こす過食欲求を防ぐことが重要となっている。

 榎木さんの場合はダイエット目的の絶食、断食ではなく、食べること自体を欲しない「不食」で、水分と一緒に必要なエネルギーも補給していたため脳、体は飢餓状態には陥っておらず、結果として理想的なダイエットとなっている。これは医師のチェックを受けながらの不食だからこそ実現できたことで、素人判断でマネしようとしても危険なだけ。1カ月とまでは言わずとも、長期間、医師が付きっきりで行うような不食は、一般人にはまず不可能だと考えた方がいいだろう。この点は榎木さんも「食べないことを推奨するつもりはない」と断言している。

 そもそも「食事を楽しむ」ことは、何も悪くない。過剰に食べ運動もしないから余分な脂肪が付いてしまうが、適切な量を食べて楽しむだけならば問題はない。榎木さんも不食を終えてからは、さまざまな種類の料理をゆっくりと味わいながら楽しんでおり、「今後の食レポは口うるさくなるかも」とコメントしている。ダイエットのために行うのが「絶食」なら、「不食」は「食事をより楽しむため」に行うもの、と言えるかもしれない。

 榎木さんの1カ月間の不食生活をまとめた書籍も、今冬に出版予定だという。飽食に疑問を感じている人や効果的なダイエットの参考にしたい人は、チェックしてみてはいかがだろうか。

(佐藤圭亮)

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