2015年10月06日 06:00 公開

ノーベル賞の大村智さん「微生物の力借りただけ」

北里大学での会見で

 今年のノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった北里大学の大村智特別栄誉教授は10月5日、同大学で記者会見を開き、受賞の対象となった業績について「私の仕事は微生物の力を借りているだけ。私自身が偉いものを考えたり、難しいことをやったりしたわけでもありません。本当に私がこのような賞をいただいていいのかなという気持ち」とコメントした。大村さんは「線虫の寄生によって引き起こされる感染症に対する新たな治療法に関する発見」で、米ドルー大学のウイリアム・C・キャンベル博士(アイルランド国籍)、中国・中医科学院のト・ユウユウ教授とともに受賞(ト教授の受賞理由は「マラリアに対する新たな治療法に関する発見」)。この発見は、抗寄生虫薬の開発につながり、途上国を中心に多くの人の寄生虫感染を防ぐこととなった。なお、賞金の800万スウェーデンクローナ(約1億1,500万円)はト教授が半分、残り半分を大村さんとキャンベル博士で等分するという。

「本当に私がいただいていいのか」

 大村さんは、1970年代から世界各地の土を採取し、その中にいる微生物が作る化学物質に有用なものがないかを調査。79年には、静岡県伊東市川奈の土にいた新種の菌が出す物質から、寄生虫に効果がある抗生物質を発見。米製薬大手メルクとともに、構造の一部を変えた抗寄生虫薬「イベルメクチン」を開発した。イベルメクチンは、六大熱帯病の一つである「オンコセルカ症(河川盲目症)」や「リンパ系フィラリア症(象皮病)」などの特効薬として普及し、現在も世界で年間約3億人がこの薬によって感染の危機から救われているという。

 会見で大村さんは、受賞を知った経緯について「今日は(午後)4時くらいには家に帰ろうとしていたが、秘書は何か予感がしていたのか、待つようにと言われたので待っていると、スウェーデンから(受賞を知らせる)電話があり、驚いた」と説明した。

 自らの業績については、「私の仕事は微生物の力を借りているだけ。私自身が偉いものを考えたり、難しいことをやったりしたわけでもありません。全て微生物のやっている仕事を勉強させていただきながら、今日まで来た。そういう意味で、本当に私がこのような賞をいただいていいのかなという気持ち」と述べた。大村さんは、会見前に行われたNHKの単独インタビューでも、「まさかノーベル賞という結果になると思わなかった」「賞の半分は微生物にやらないといけない」とコメントしていた。

受賞を最初に報告したのは亡き妻

 また、最初に受賞の報告をしたのが16年前に亡くなった妻であること、その妻が大村さんの研究生活を支え続けてくれたことなどを話し、研究に取り組む姿勢については祖母の「人のためになることを考えなさい」という教えと、スキーで学んだという「人のまねをしない」を基本にしていたと明かした。

 このほか、若い研究者に対しては「失敗してもいいからやってみよう、という気持ちを絶えず起こさなければならない。成功した人は失敗談を語らないが、人の2倍も3倍も失敗していると思う。若い頃は1回や2回失敗しても大したことない。失敗を繰り返してやりたいことをやりなさいと言いたい」とアドバイスした。

 なお、会見の途中に、安倍晋三首相から祝福の電話が入ったが、大村さんは「どうもわざわざすみません」と答え、会場に集まった記者の笑いを誘っていた。

 日本人のノーベル賞受賞は、昨年の物理学賞(赤崎勇・名城大学終身教授、天野浩・名古屋大学教授、中村修二・米カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授)に続いて2年連続で、米国籍の中村教授、故・南部陽一郎さん(2008年物理学賞)を含めて23人目。生理学・医学賞は利根川進・米マサチューセッツ工科大教授(1987年)、山中伸弥・京都大教授(2012年)に続き3人目となる。

(小島領平)

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