2015年10月19日 06:00 公開

ゾウはなぜがんになりにくいのか―米研究チームが解明

がんに関わる遺伝子の量に差

 ゾウは、人間に比べてがんになりにくい。医師や生物学者らの間では以前からよく知られている事実だが、なぜなのかはよく分かっていなかった。米ユタ大学医学大学院のリサ・M・アベグレン助教(小児科・腫瘍科学)らは、その理由を突き止め、10月8日発行の米国医師会誌「JAMA」(電子版)に報告した。人間とゾウでは、がんを抑える働きのあるタンパク質「p53」を作り出す遺伝子の数に違いがあるという。

p53とは?

 「p53」は細胞の中にあるタンパク質で、傷ついた遺伝子を直したり、その傷が治らない場合にアポトーシス(細胞死=細胞分裂を止めて異常な細胞の増殖を防ぐこと)を起こす働きを持っている。人間に限らず、がんの原因の半数近くは、このp53タンパク質を作る遺伝子(p53遺伝子)の異常が認められる。

異常な遺伝子を排除する割合が人間の2~3倍

 アベグレン助教らは、36種類の哺乳類の解剖データを分析したところ、人間ががんにかかる割合が11~25%なのに対し、ゾウはおよそ5%と非常に低いことが示された。なお、寿命の長さや体の大きさとがんにかかる割合には関連がなかった。

 人間とゾウの遺伝子を解析した結果、がんを抑える働きのあるp53遺伝子の数が、人間では1コピー(2対立遺伝子)しかないのに対し、象では少なくとも20コピー(40対立遺伝子)以上もあることが分かった。

 さらに、放射線や抗がん剤などでわざと細胞にダメージを与えたところ、アポトーシス(細胞死)が起こる割合は健康な人間で7~8%なのに対し、ゾウでは14~22%と高かった。つまり、異常な遺伝子を見つけて排除する割合が、ゾウでは人間の2~3倍に上ることが分かったのだ。ちなみに、生まれつきp53遺伝子に変異があるリ・フラウメニ症候群では、アポトーシスの割合が3%弱と低かった。

 今回の研究が進むことで、より効果が高く副作用が少ない抗がん剤の開発や、がんに対する新たな標的治療など、さまざまな方面からがんに対する治療法が開発される可能性がある。多くのがん患者にとって福音となるかもしれない。

(あなたの健康百科編集部)

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