2015年10月20日 06:00 公開

カルシウムに骨折の予防効果なし、食事もサプリも

70研究を分析

 カルシウムには骨折予防のイメージがあるが、それを覆すような研究結果が、ニュージーランドから報告された。同国オークランド大学医学・健康科学部のマーク・J・ボランド准教授らは、これまでに報告された70件以上の研究を分析した結果、食事でもサプリメント(栄養補助食品)でもカルシウムに骨折を予防する効果がなかったと、英医学誌「BMJ」(2015; 351: h4580)に報告した。ボランド准教授らは「食事かサプリメントかにかかわらず、カルシウムの摂取量を増やせば骨折を予防できるとのエビデンス(根拠となる研究結果)は今のところない」と結論している。

米政府諮問機関と米学会が意見対立

 カルシウムは骨を強くするとされ、特に高齢者では骨折予防でたくさん取ることが推奨されている。日本では1日の推奨量が低めに設定されているが(50歳以上の男性で700ミリグラム、女性で650ミリグラム)、米国では51歳以上の女性に1日1,200ミリグラム以上取ることを推奨。食事だけでは満たせないため、米国では高齢女性の3~5割がカルシウムサプリメントを愛用しているという。

 カルシウムをめぐっては、1992年に、施設に入居する高齢女性にカルシウムとビタミンDのサプリメントを服用させたところ、プラセボ(偽薬)を取っていた人たちに比べて脚の付け根を骨折するリスクが43%下がったことが報告された。

 しかし2013年、米政府の諮問機関が「骨折予防を目的にビタミンDとカルシウムの摂取を推奨するにはエビデンス不十分」とする勧告を公表。これに対し、米国骨代謝学会が異議を唱えるなど、現在も専門家の間で意見が分かれている。

 そこでボランド准教授らは今回、2014年9月までに公表された50歳以上の男女が対象の研究をまとめ、カルシウムと骨折リスク、骨密度への影響について分析した。

牛乳や乳製品も"意味なし"?

 食事からのカルシウム摂取について46件の研究を分析したところ、ほとんどの研究で骨折リスクとの関連が認められなかった。これは、牛乳や乳製品からに限定しても変わらなかったという。

 また、サプリメントからのカルシウム摂取について26件の研究を分析したところ、全ての骨折をまとめたリスクは11%減、椎体(脊椎を構成する椎骨の円柱状の部分)骨折のリスクは14%減だったが、大腿骨近位部(脚の付け根)骨折と前腕骨折については変わらなかった。さらに、26研究のうち研究の水準が高い4件の研究(参加者計4万4,505人)では、どの部分の骨折もリスクは低下していなかった。なお、ビタミンDがあってもなくても変わらなかったという。

 ただし、施設に入居するフレイル(虚弱=要支援・要介護になる危険性が高い状態)の高齢女性では、カルシウムとビタミンDのサプリメントの服用で骨折リスクが低下したとする研究が1件あった。

1日700~800ミリグラムが適切か

 今回の分析では、カルシウムの摂取が胃腸などの病気による入院や、尿路結石などの危険性を高めることも示唆された。また、ボランド准教授らが以前に発表した研究結果では、カルシウムサプリメントは骨折リスクの予防の恩恵よりも、心臓や血管の病気になるリスクが高まる害の方が大きいとしている。

 そのため、「骨折予防におけるカルシウムサプリメントの利点はわずかで、それを支持する結果も一貫しておらず、危険性と利点のバランスは好ましいものとは言えなさそうだ」と考察している。ただし、施設に入居する高齢女性など特定の人たちには有用な可能性があるため、さらなる研究が必要と付け加えた。

 また、骨密度への影響についての検討も発表したおり、こちらは59件の研究を分析した結果、カルシウムを取ることでわずかに改善することが分かったとした(「BMJ」2015; 351: h4183)。詳しくは、食事からの摂取で骨密度が0.6~1.0%増、サプリメントからの摂取で0.7~1.8%増だが、ボランド准教授らは「この程度の骨密度の増加では骨折予防には不十分」と評している。

 この研究に対する論評(「BMJ」2015; 351: h4825)を執筆したスウェーデン・ウプサラ大学臨床研究センターのカール・ミカエルソン教授(整形外科)は、今回の結果について「全ての高齢者に対し、一律にカルシウム摂取を推奨すべきではないとの説得力のあるエビデンスを踏まえると、今こそ議論の的になっている(カルシウムを1日1,200ミリグラム摂取すべきとの)推奨内容を見直す必要があるのではないか」と指摘。推奨量ついては「英国や北欧諸国で推奨されている1日700~800ミリグラムが適切ではないか」との見解を示した。

(あなたの健康百科編集部)

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