2015年10月22日 06:00 公開

骨折でエコノミークラス症候群に? 市民公開講座で注意喚起

日本血栓止血学会

 毎年10月13日は「世界血栓症デー」。いわゆるエコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓=そくせん=症)などの血栓症を知ってもらうため、世界的に啓発活動が展開されている。日本血栓止血学会はこの日に向け、国内2カ所で市民公開講座を開催。10月12日に開かれた東京講演では、エコノミークラス症候群が発生する仕組みなどを解説し、入院や安静にしている状況、特に骨折したときは危険度が高いと紹介。予防の重要性を強調した。なお10月13日は、血栓症を提唱したドイツの病理学者、ルドルフ・ウイルヒョウの生誕日。

入院生活がリスクを高める

 血栓症とは、血管の中にできた血の塊(血栓)が血の流れを妨げ、それによって引き起こされるさまざまな病気のこと。エコノミークラス症候群の場合は、ふくらはぎなどの静脈に血栓ができ、それが血流に乗ってたどりついた肺動脈をふさいでしまう。医学的には、ふくらはぎに血栓ができることを「深部静脈血栓症」、血栓が肺動脈をふさいでしまうことを「肺血栓塞栓症」といい、2つを合わせて「静脈血栓塞栓症」と呼ばれている。

 飛行機に長時間乗っているときはもちろん、長時間同じ姿勢でいるときも起こりやすくなる。実際、東日本大震災の被災地では、窮屈な避難生活を送る人々の間で静脈血栓塞栓症が数多く報告されている。昨年の世界血栓症デーに開かれた市民公開講座では、岩手県大槌町の仮設住宅で行った巡回検診がライブ中継され、多くの人の脚に血栓ができていることが紹介された(関連記事:エコノミークラス症候群の現状、被災地からライブ中継)。

 今年の市民公開講座のテーマは「意外と身近なところで起こる! 静脈血栓症って?」。上記以外で血栓ができやすい身近な状況と言えば、入院や安静を余儀なくされているときだろう。特に骨折はギプスで固定するため、より危険度が高くなる。また、股関節を骨折した場合の手術や人工関節(股関節・膝関節)の手術でも、血栓が発生しやすくなるという。講座では、こうした状況では注意すべきと紹介された。

 では、血栓を発生させないために何をすればよいのか。講座では、予防法として下記の6点が挙げられた。

  • 早くベッドから起き上がり、歩くこと(早期離床・歩行)
  • 足首の背屈運動、底屈運動などを行う
  • ふくらはぎのマッサージ、脚を挙げる、足関節背屈などをしてもらう
  • 弾性ストッキングや弾性包帯を身に着ける
  • 機械をつかって脚を圧迫する(間欠的空気圧迫法)
  • 薬による治療

予防法知れば怖くない病気

 体験者からのメッセージとして、患者会「肺塞栓症・深部静脈血栓症友の会」の江原幸一代表(NPO法人日本血栓症協会理事)が登壇。江原代表は、2002年に妻が帝王切開で出産した翌日に肺塞栓症を発症し、それ以来、意識不明のまま53日後に息を引き取ったという。江原代表の妻は診断までに1時間かかったそうだが、当時は診断までかなりの時間を要していた上に、肺塞栓症の予防に健康保険が適用されなかった。肺塞栓症の認識と予防を徹底したいと思い、患者や家族の支援団体を設立したとしている。

 また、エコノミークラス症候群の経験者であるサッカー元日本代表の高原直泰選手と、江原代表との対談の模様がビデオで紹介された。高原選手は「一生付き合う病気に対して、自分が向き合って病気を意識して管理するというのではなく、無意識に管理できるようにしていきたい」コメント。江原代表は「病気を克服するためには患者、医療者、製薬会社の緊密な協力が必要」と強調した。

 同学会の尾崎由基男理事長(笛吹中央病院院長)は「誰にでも起こる可能性のある病気だが、予防法を知れば怖くないことを認識してもらうため、世界血栓症デーなどを通して今後も啓発していきたい」と総括した。

(あなたの健康百科編集部)

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