2015年11月26日 20:30 公開

世界初! 装着する歩行補助ロボット「HAL」承認―厚労省

脳信号受けて作動、フィードバックも

 厚生労働省は11月25日、8つの神経や筋肉の病気に対するサイバーダイン(茨城県つくば市)のロボット治療機器「HAL医療用下肢タイプ」の製造・販売を承認した。利用者の脳から「動かしたい」という信号を読み取って作動し、歩く機能が低下した患者の歩行を補助したり、脳に動きのフィードバックしたりするという。こうした仕組みを持つロボット治療機器が開発されたのは世界初。同社は、「HAL」を使った治療の保険適用に向けた手続きのほか、対応する病気を広げるべく治験を進めているという。

補助だけでなくリハビリにも有効

 サイバーダイン社は、筑波大学大学院システム情報工学研究科の山海嘉之教授(サイバニクス研究センター長)の研究成果で社会貢献することを目的に、2004年に設立されたサイバニクス技術の研究開発、製造、販売などを行っている会社。サイバニクスは、人の能力を支援する技術を開発するため、情報技術やロボット工学、脳神経科学、生理学、心理学などのさまざまな分野の知識を融合した新しい学問のことだ。

 「HAL」はサイバニクス技術によって開発された代表的なロボットスーツで、脳から発信された「動かしたい」という信号(生体電位信号)を皮膚の表面でセンサーが読み取り、装着した人の動きを補助するよう作動するというもの。さらに、脳は体を動かした後にどんな信号を出したらどんな動きをしたかを確認するのだが、「HAL」の補助によって脳が「歩けた!」と認識することで信号の出し方を少しずつ学習し、補助なしでも歩けるようになることにつながるという。つまり、脳にフィードバックすることでリハビリの効果を高めるというのだ。

 こうした仕組みのロボット治療機器は世界初で、欧州連合(EU)内ではすでに医療機器として承認されており、ドイツでは公的な労災保険の適用が認められている。同社公式サイトでは、雪下ろしの最中に高所から落下した人(胸椎損傷患者)が、「HAL」を使ったリハビリの結果、10メートル歩行する速度が改善されたほか、「HAL」を使わずに歩行器で1キロ以上歩けるようになったことが紹介されている。

対象の8疾患は?

 福祉、自立支援、介護支援、作業支援など目的に合わせて腕、腰、脚の動きを補助するユニットが開発されているが、今回承認された医療用は脚の動きのみをアシストする。厚労省が承認した使用目的は、「本品は緩徐進行性の神経・筋疾患患者を対象として、本品を間欠的に装着し、生体電位信号に基づき下肢の動きを助けつつ歩行運動を繰り返すことで、歩行機能を改善することを目的として使用する」となっている。

 対象は、以下に挙げる8つの病気のいずれかと診断され、歩行の介助や歩行補助具が必要な人。装着できるサイズは体重40~100グラム、身長150~190センチ程度などとされている。

脊髄性筋萎縮症(SMA) 712人
球脊髄性筋萎縮症(SBMA) 916人
筋萎縮性側索硬化症(ALS) 9,096人
シャルコー・マリー・トゥース病(CMT) 6,250人
遠位型ミオパチー 400人
封入体筋炎(IBM) 1,000人
先天性ミオパチー 1,000人
筋ジストロフィー 2万5,400人
※数字は指定難病認定患者数

 同社は今後、「HAL」を使った治療への保険適用に関連する手続きを行うほか、HTLV-1関連脊髄症(HAM)をはじめとする脊髄疾患への治験が進行中で、適応拡大を目指す意向を示している。

(あなたの健康百科編集部)

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