2015年12月11日 06:00 公開

子供の野球肩・肘が4割減! 予防プログラム「YKB-9」

専門家が開発

 野球の投球動作は、肩や肘などに大きな負担をかける。まだ体が成長しきっていない子供ではなおさらだ。投手をしている小学生の4人に1人が肘痛を抱えているとの報告もあり、こうした投球障害の予防は緊急の課題だろう。横浜市スポーツ医科学センターリハビリテーション科の坂田淳氏(理学療法士)らは、こうした子供の投球障害を予防するプログラム「Yokohama Baseball-9(YKB-9)」を開発。小学生の野球選手484人で効果を調べたところ、野球肩や野球肘などの投球障害が4割減ったと報告した。この結果は、9月11~12日に京都市で開かれた日本整形外科スポーツ医学会の会合でも発表された(関連記事:野球少年の肘を守れ! セルフチェックで早期発見を)。

野球肘発生のピークは11~12歳

 大事な試合前や試合の勝負を分ける場面など、選手はムリをしがちだ。しかし、それが選手生命を絶つだけでなく、日常生活に支障を来す後遺症を招く可能性があることは、特に選手が子供の場合、周りの大人が意識していなければならないだろう。なお、野球肘は11~12歳、野球肩は15~16歳で最も多く発生するとされている。

 こうしたことから、日本臨床スポーツ医学会では、小学生は練習を週3日以内、全力投球は1日50球以内にするよう提言している。

9種のストレッチと9種のエクササイズ

 坂田氏らが小学生の野球選手593人を調査したところ、投球障害の要因は(1)週2回以上の自主練習、(2)1日100球以上の投球、(3)胸椎後弯角の増大(背骨が後ろに曲がる変形が強くなること)―の3点。また、野球肩や野球肘に特化したそれぞれの要因も分かったという。

 「YKB-9」は、この調査結果に基づいて坂田氏らが作成した投球障害予防を目的とした準備運動プログラム。肩、肘、腕、体、股関節のストレッチ(9種類)と、腱板、肩甲骨、体、脚のエクササイズ(9種類)で構成され、所要時間は20分程度だ。

 坂田氏らは今回、横浜市内の小学校5年生以下の野球選手484人を、練習前後や自宅で「YKB-9」を行うグループと、行わないグループに分類。1年間調査して投球障害が発生する割合を比べた。

姿勢や股関節の可動域が良好に

 その結果、「YKB-9」を行ったグループで投球障害の発生率が40%低下していた。特に、肘内側障害の発生率が低かったという。また、投球障害の要因である胸椎後弯角が良くなって姿勢が改善。股関節の可動域は「YKB-9」を行わなかったグループで狭くなっていたが、行ったグループでは変化がなかった。

 さらに分析すると、学年と「YKB-9」が投球障害の発生に関連していること、「YKB-9」を行っているグループでは投球数や練習回数が多くても投球障害に影響しないことが示唆された。このことは、投球数や練習回数の制限に加え、身体機能の改善が投球障害の予防に有効なことを示唆しているという。一方で野球肩に絞って調べると、発生率の低下が乏しかったようだ。

 なお、「YKB-9」を行ったグループの実施率は62.8%で、実施しなかった子供たちの投球障害発生率は、「YKB-9」を行わなかったグループと同じだった。

新プログラム「YKB-9+」の効果を検証中

 こうした結果を踏まえ、坂田氏は現在、肩周囲のプログラム内容などを修正・厳選し、準備運動(ウオーミングアップ)に導入することで実施率の向上を図った新予防プログラム「YKB-9+」の効果を検証中。「YKB-9+」を行っているチームでは、怪我が減ることで練習に参加できる選手も増え、戦績も向上しているという。

 坂田氏は「怪我の防止を訴えることに加え、パフォーマンスやチーム力向上を強調するなど、興味を持たせる工夫を盛り込むことが、継続性を保って効果を発揮するポイント」としている。

(あなたの健康百科編集部)

更新履歴:
12月13日 坂田氏らによる「YKB-9」の検討期間を3カ月から1年に修正しました。

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