2015年12月14日 10:00 公開

スポーツ中に脳しんとうを起こしたら? 学会が注意呼びかけ

命に関わる脳損傷につながる恐れ

 スポーツにケガは付きものだが、頭を打って脳しんとうを起こした場合は特に注意が必要だ。軽いとすぐに立ち上がって競技を続けることも少なくないが、実は深刻な状態になっている可能性もあるという。日本脳神経外科学会は、スポーツによる脳しんとうについて軽く捉えないよう注意を喚起。そのまま競技を続けると、急激な脳腫脹や急性硬膜下血腫など、命に関わる脳損傷につながり恐れもあるとしている。

復帰は症状消えてから徐々に

 脳しんとうは、頭を強く打った際に意識がなくなったり、放心状態や錯乱状態になったりすることで、15分以内に意識が戻ることが多いといわれている。出血していない場合などは軽く見られがちだが、実は脳が不安定な状態になっており、後になって頭痛や目まい、集中力の低下、イライラ、うつ状態、不安などの症状が出てくる。怖いのが、この状態でまた頭を強く打った場合で、脳細胞が変化して認知症に似た症状が出ることもあるという。

 湘南医療大学(横浜市)の片山容一副学長(脳神経外科)は、同学会の会見で「可能な限り脳しんとうを起こさないようにすることが重要」と指摘。軽症例を含め脳しんとうと診断されたら、日本特有の「根性論」をやめ、直ちに競技・練習を中止すべきとした。また、脳が不安定な状態が数週間続くことがあることから、復帰は症状がなくなってから徐々に行うよう求めた。

 こうした点を踏まえ、同学会は以下の4点を提言した。

  1. 軽度の脳しんとうを見逃さない
  2. 脳しんとうと診断されたら、直ちに競技・練習をやめる
  3. 症状の消失後、徐々に復帰する
  4. 脳に損傷や出血が見られたら競技・練習に復帰すべきでない

プロ野球でも対策を本格化するが...

 また、脳に損傷を負ってしまった場合、程度によるものの、医学的にはその競技に復帰すべきではないと判断される。片山氏は「少なくともそのシーズン中は復帰を避けるべき」との意見にとどめた一方、プロスポーツ団体が脳しんとうに関するガイドライン(指針)を自ら作ることが望ましいとした。

 体の接触が多いサッカーやラグビーなどの競技ではすでにガイドラインが導入されているが、米大リーグ(MLB)も脳しんとうを起こした場合は脳しんとうテストや故障者リスト入り(7日間)などの対策を取っている。一方の日本野球機構(NPB)も来季から対策を本格化し、症状を訴えた選手は7日間の故障者リスト入りする見込みだ。

 とはいえ、こうした対策で十分とは言い切れないかもしれない。MLBサンフランシスコ・ジャイアンツ(当時)の青木宣親外野手の例があるからだ。青木外野手は、右頭部を直撃した死球で脳しんとうを起こしたが、翌日に受けたMLBの脳しんとうテストをクリア。その2日後の試合に先発出場したものの、守備の際にフェンスへ激突して脳しんとうを再発した。さらに、7日間の故障者リスト入りを経て出場したが、打撃が振るわず成績が急降下。2週間後にはまたもや脳しんとうを再発したという。

武道必修化で教育現場にも指針を

 片山氏はこのほか、2012年度に中学1、2年生で武道が必修化されたことから、学校教育現場でのガイドライン作りは教育関係者と同学会が共同で行う必要があると指摘。また、米国サッカー協会(USSF)が「10歳以下の子供にヘディングをさせてはいけない」との指針を発表したことについては、「ヘディングによる脳しんとうに対してUSSFがかなりの危機感を持っている」とした。

 その上で「わが国のアマチュアスポーツ団体、プロスポーツ団体は足並みをそろえ、脳しんとう後の練習や試合への参加に制限を設けるなど、科学的根拠に基づく判断を行うべき」と述べている。

(あなたの健康百科編集部)

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