2016年03月23日 06:00 公開

ヨガで心臓病患者の生活の質が向上―スウェーデン研究

心拍数や血圧も低下

 健康な人はもちろん、持病のある人にも良い効果をもたらすことが、科学的に証明されつつあるヨガ。最新の研究によって、また一つその効果が示された。世界的に有名な医学研究所であるスウェーデン・カロリンスカ研究所のチームによるもので、不整脈の一つである心房細動の患者80人を調べたところ、ヨガを行った人たちでは、行わなかった人たちに比べて生活の質(QOL)が向上し、心拍数や血圧値も改善したという。詳細は、欧州の看護学専門誌「European Journal of Cardiovascular Nursing」(電子版)に掲載されている。

「医療用ヨガ」先進国スウェーデン

 ヨガは、健康な人だけでなく、さまざまな病気を抱えた人の健康状態も改善する可能性があるとして、最近、医学研究が盛んに行われている。昨年末には、ヨガを行っている人では、健康な人だけでなく糖尿病患者や心臓病患者でも血圧や脂質、血糖などの値が改善していたとする米ハーバード大学のチームによる37件の研究データの分析結果も報告されている(関連記事:「ヨガが心臓病の予防に有効、効果は有酸素運動と同じ」)。

 こうした病気の人に対するヨガの効果にいち早く目を付け、医療に取り入れた国がスウェーデンだ。同国では、心臓病患者のリハビリテーションへの「医療用ヨガ」導入を皮切りに、腰痛や高血圧、がんの他、摂食障害や不安障害など精神疾患の治療やリハビリにもヨガが取り入れられているという。なお、現在では同国内のほぼ10%の病院でヨガのプログラムが提供されているという(MEDIYOGA公式サイト)。

 今回報告されたのは、そのスウェーデンで発作性心房細動の患者80人(平均63~64歳)を対象に、精度の高い方法(ランダム化比較試験)で行われた研究の結果だ。心房細動は不整脈の一種で、心臓の拍動数が1分間に300回以上と早くなり、かつ不規則に拍動する病気。日本では70万人の患者がいると推定されている。発作性心房細動では突然、胸の痛みや呼吸困難などの発作が起こり、しばらく続く。こうしたことから、発作を恐れて外出を楽しむことができない患者も多いという。

 心房細動そのもので命を落とすことはないが、放置していると心臓の機能が低下し、心不全や脳梗塞を起こす可能性もある。そこで、心房細動に対しては症状を軽減する治療(対症療法)と、脳梗塞などの病気を予防するための治療(薬物治療やカテーテルアブレーション、電気的除細動など)が行われる。今回、研究チームは、こうした治療に加え、ヨガを行うグループと、標準的な治療のみのグループに40人ずつ分け、研究の開始時点と終了時点の生活の質や心拍数、血圧などを比較した。

呼吸法が心拍数や血圧に好影響か

 この研究では、カロリンスカ研究所で心臓病患者向けに考案された「MEDIYOGA」と呼ばれる医療用ヨガが行われた。このヨガは、病気を抱えていても行えるような穏やかな動きと瞑想(めいそう)で構成されており、立つのが難しい患者は座ったままでもできるという。今回の研究では、ヨガを行うグループに割り当てられた参加者は、インストラクターの指導の下、10人以下のグループでこのセッション(1時間)を週1回、3カ月間受けた。

 その結果、研究終了時にヨガを行ったグループでは生活の質が向上していたが、行わなかったグループでは変化がなかった。また、血圧値や心拍数もヨガを行ったグループで改善していた。

 この結果について、研究チームは「ヨガで行う深呼吸が副交感神経系と交感神経系のバランスを整え、心拍数の変動を抑えるのに役立っているのかもしれない。また、ヨガの呼吸法と動きは、血圧に良い影響を及ぼしている可能性がある」と考察した。生活の質が向上したことについては「治る望みがないと絶望的な気持ちにならず、ヨガによってセルフコントロールの感覚を持てるようになったことが寄与しているのかもしれない」としている。

 さらに「心房細動患者の治療では、生存期間の延長や病状の悪化を回避するだけでなく、日常生活を改善することも重要。ヨガは、日常生活の質を向上させることが分かった」と説明。心房細動は高齢になるほどかかりやすくなるため、今後その患者数が増加すると予測されていることにも触れ、医療費の抑制という観点からも今後、ヨガは心房細動の治療を補完する有望な手段になるかもしれないとの見方を示している。

 なお、研究チームは現在、この結果を確かめるため、より大規模な研究を開始した。新しい研究では、通常の治療のみ、通常の治療+ヨガ、通常の治療+音楽療法の3グループに分けて比較するという。この研究によって、ヨガの動きや呼吸法に効果があるのか、あるいは今回の成績は単なるリラクセーション効果によるものなのかを検証したいとしている。

(あなたの健康百科編集部)

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