2016年03月29日 06:00 公開

遺伝子検査、受けても意味なし? 生活習慣改善せず

英研究者ら分析

 日本でも次々と民間企業が参入し、注目度が高まりつつある遺伝子検査。検査キットをネットで購入し、唾液を採取して送り返せば、数週間後に自分の体質やさまざまな病気へのかかりやすさなどを知らせてもらえる、というのが一般的なサービス内容だ。検査を受けることによって、病気のリスクが高いと判定された人が食事に気を付け、運動量を増やすなど生活習慣の改善を心がけるようになるのではないかと期待されている。ところが、英ケンブリッジ大学のグループは、2015年2月までに発表された研究のデータを集めて分析したところ、遺伝子検査を受けても生活習慣には影響しないことが分かったと、3月15日発行の英医学誌「BMJ」(電子版)で報告した。同グループは「遺伝子検査によって人々の行動を変えられるとの科学的根拠はないと考えるべき」との見解を示している。

日本を含む18研究を分析

 遺伝子検査の意義についてはサービスが普及した現在も賛否両論あり、議論が続いている。賛成派の主張は「検査結果を知ることが(病気を予防するために)自分の行動を変えるきっかけになり得る」というもの。これに対し、反対派からは「遺伝子変異の有無だけでは病気のリスクは判断できない」といった声が上がっている。

 では、本当にこうした一般消費者向けの遺伝子検査サービスにメリットはあるのだろうか―。研究グループは今回、米国(8研究)や英国(5研究)、日本(3研究)などで実施された計18研究のデータを集め、遺伝子検査を受けることによって、意識や行動にどんな変化があったかについて分析した。検討された具体的な行動の内容とデータの規模は、以下の通り。

  • 禁煙(6研究、2,663人)
  • 食生活の改善(7件、1,784人)
  • 運動習慣の改善(6件、1,704人)
  • 節酒(3件、239人)
  • 薬剤の使用(1件、162人)
  • 日焼け予防(1件、73人)
  • 検診や行動変容支援プログラムへの参加(2件、891人)

毒にも薬にもならない? 悪影響も認められず

 その結果、いずれの行動についても、遺伝子検査を受けても受けなくても差はなく、検査を受けることによって行動が変化するわけではないことが示されたという。また、実際に行動に変化があったかどうかだけでなく、行動を変えようとの意志が芽生えたかどうかについても、検査を受けたことによる影響はなかったとしている。

 ただ、これまで遺伝子検査のデメリットとして、結果を知ることで不安となり、精神的に不安定になる可能性が指摘されていたが、今回の分析からは、検査結果を知ることでうつ症状や不安といった精神面への悪影響はないことが分かったという。

 遺伝子検査の項目に含まれることの多い心臓病やほとんどのがん、糖尿病などは、一つの遺伝子の異常が原因となるわけではなく、さまざまな遺伝子がお互いに作用し合って発症すると考えられている。さらには遺伝子だけでなく、行動や生活環境なども影響することが分かっており、これらの病気は「複合疾患(complex disease)」とも呼ばれているという。

 研究グループは「複合疾患のリスクを示して予防に向けた行動の変化を促すために、遺伝子検査を受けるべきかどうか。今回はそれを裏付ける分析結果は得られなかった」と結論。ただ、「こうした遺伝子検査は、医師が患者の病気のリスクを評価し、適切な検診や治療の方法などを選ぶ際に役立つ可能性はある」との見解も示している。

(あなたの健康百科編集部)

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