2016年04月05日 06:00 公開

「乳児はコメ控えて」...ヒ素懸念で米当局―欧州に続き

乳児用ライスシリアル規制へ

 健康に有害なヒ素が多く含まれるとして、欧米諸国でコメに厳しい視線が集まっている。米規制当局の食品医薬品局(FDA)は4月1日、食品メーカーに対し、コメを主な原材料とする乳児向けシリアル(ライスシリアル)に含まれる無機ヒ素の含有量を、1キログラム当たり0.1ミリグラム未満に抑えることを求める勧告の草案を発表した。無機ヒ素には発がん性があるとされ、今年1月から欧州連合(EU)でも同じ基準値が導入されている。FDAは、他の穀類によりも無機ヒ素を多く含むコメの摂取量が多いと、小児期の学習能力にも影響する可能性があるとして、妊婦や乳幼児にはコメだけでなく他の種類の穀類も摂取し、コメ食に偏らないよう注意を呼びかけている。 

スウェーデンでは「6歳未満にコメ・コメ製品を与えてはいけない」と勧告

 ヒ素には、土や水に自然に含まれる天然由来のものと、火力発電や金属の加工などの過程で出るものがあり、両方を合わせてほとんどの野菜、魚、肉に含まれている。ただ、水田で育つコメは他の農産物に比べ、健康に有害な「無機ヒ素」を吸収しやすいとされる。無機ヒ素は、国際がん研究機関(IARC)が発がんのリスクが最も高い「グループ1」に分類する物質だ。こうしたことから昨年(2015年)9月にスウェーデンでは6歳未満の乳幼児にコメやコメ製品を与えないよう勧告。6歳以上の子供や大人も毎日食べるべきでないとした。さらに、今年からEU全体でもコメやコメ製品に含まれる無機ヒ素の上限値が設けられることになった。

 今回のFDAによる勧告は、乳幼児向けライスシリアルに関するもので、より広くコメやコメ製品について基準値を示した欧州と比べれば限定的だ。発がん性に関しても、コメやコメ製品に含まれる無機ヒ素は肺がんや前立腺がんのリスクをわずかに高めるが、米国内の全ての肺がん・前立腺がんの1%にも満たない程度だとしている。ただ、草案と合わせて紹介されている「一般消費者向けのアドバイス」には、「妊婦や乳幼児が無機ヒ素を含んだ食品を摂取すると、胎児や乳幼児が成長した時の学習能力に悪影響を及ぼす可能性がある」として、以下の対策を取ることが勧められている。

  • 鉄を強化したライスシリアルは乳児にとって優れた栄養源だが、それだけに偏らないようにする。また、必ずしもライスシリアルで離乳食を開始すべきわけではない。コメ以外のオート麦や大麦、複数種の穀物が混ざったマルチグレーンの鉄強化シリアルといった選択肢もある
  • 幼児には、さまざまな種類の穀類を与え、バランスの取れた食事を取らせるようにする
  • 妊婦も小麦やオート麦、大麦といったさまざまな種類の穀類を含む、多様な食品を摂取することが賢明だろう

日本人には受け入れがたい?

 一方で、今回の発表に合わせ、FDA公式サイトに掲載されたQ&Aでは、「バランスの取れた食事の一部と食べるならコメ食も可」とされており、コメ食が完全に否定されているわけではない。また、Q&Aには一般消費者がコメに含まれる無機ヒ素を減らすためにできる対策として、「コメの6~10倍の水を使って調理し、余った水分を捨てる」という、日本人には受け入れられにくそうな調理法が紹介されている。

 ただ、この調理法では無機ヒ素を40~60%減らすことができるが、コメに含まれる重要な栄養素も逃げてしまう可能性があるとの説明も。無機ヒ素の危険性と栄養のどちらを取るべきか判断するのは難しそうだ。

 コメは日本人にとって欠かせないものだが、実は米国でも特に離乳食には欠かせない食品で、ライスシリアルは離乳食の定番だという。離乳食用のライスシリアルは一般的にパウダー状で、母乳や水などで溶いて使用するものが多い。

 2014年にFDAが米国内で販売されている乳児用ライスシリアル76製品を調べたところ、約半数(47%)がヒ素の基準値を超えていたが、ほとんどがわずかに上回る程度だったという。このことから、FDAは「原材料を含有ヒ素が少ないコメに切り替えるなどの企業努力でほとんどの製品を基準値内に抑えられるのではないか」との見方を示している。

玄米より白米の方がヒ素少ない

 欧州に続き、米国でもコメに含まれる無機ヒ素の基準値が示されることになり、欧米人よりも日常的なコメの摂取量が多い日本人としては、こうした動向は気になるところ。ただ、コメを主食とする日本食は健康長寿食として知られる。

 コメに含まれるヒ素に関し、農林水産省では「通常の食生活を通じてヒ素が体内に入ることで、健康に悪影響が生じたことを明確に示す国内のデータは現在のところない」として、コメを含むバランスの良い食生活を送るべきとの見解を公式サイトで示している。

 また、コメに含まれる無機ヒ素は玄米の外側に付いている糠(ぬか)の部分に多く含まれているため、玄米よりも白米の方がヒ素濃度が低くなると紹介。ただし、糠には鉄分や食物繊維などの栄養成分が豊富に含まれ、白米と比べて玄米の方が栄養面で優れた食品であるとも説明し、「バランスの良い食生活を送っていれば玄米や糠漬けを食べても健康への問題はない」としている。

(あなたの健康百科編集部)

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