2016年06月23日 06:00 公開

救急車の到着遅れても...「心肺蘇生」で救命率2.7倍

人工呼吸+心臓マッサージの従来法がベスト

 万が一、近くにいる人が心臓停止状態となったら、一刻も早く救急車を呼ぶことが重要なのは誰もが知るところだろう。ただ、その場所が過疎地だったり、あるいは都市部でも高層ビルの上層階だったり、道路が渋滞していたりして、救急車が到着するのが遅れてしまう場合は少なくない。そんな時、その場に居合わせた人がすみやかに「心肺蘇生」を始められれば、何もしなかった場合に比べて救命率が2.7倍に高まることが、金沢大学付属病院救命センター長の稲葉英夫氏らが実施した調査から明らかになった。調査では、心臓マッサージのみによる心肺蘇生よりも心臓マッサージと人工呼吸を組み合わせた心肺蘇生を受けた人の生存率が最も高いことも分かったという。詳細は6月4日発行の医学誌「Resuscitation」(電子版)に掲載されている。

「電話で指導受けながら」よりも「ただちに自ら心肺蘇生を開始」の方が救命率アップ

 稲葉氏らは今回、2007~12年に国内で心臓停止状態となった人のデータ約72万件のうち、一般市民に目撃された約19万件を分析した。その結果、119番通報から救急隊が到着するまでの時間が長かった場合でも、その場に居合わせた人が自ら人工呼吸と心臓マッサージを組み合わせた心肺蘇生を行ったケースでは、心肺蘇生が行われなかったケースに比べて1カ月後の生存率(1カ月後に自立した生活ができる状態で生存している割合)が2.7倍に増加することが明らかになった。一方、119番通報後に電話で通信指令員による口頭指導を受けながら心肺蘇生を行ったケースでは、心肺蘇生が行われなかったケースに比べて同生存率は1.5倍の増加にとどまっていたという。

 さらに最近、心臓マッサージ単独でも従来の人工呼吸と心臓マッサージを組み合わせた心肺蘇生と同等の救命率が得られるとの研究結果が報告され、一般市民を対象とした講習では心臓マッサージのみが重視される傾向にあったが、今回の調査では心臓マッサージ単独よりも人工呼吸を組み合わせた従来法の方が救命率が高まることも明らかになった。

 稲葉氏らによると、近年、救急車の出動件数は増加傾向にあり、その影響で救急車を要請してから到着するまでの時間(全国平均)が15年前の6.2分から2年前には8.6分と13年間に2.4分も延長した。また、救急車の到着が遅れがちな地域では、心臓停止状態になった人の生存率が極めて低いことも分かっているという。

 こうした地域で心臓停止状態となった人の救命率を向上させる方策の1つとして有望視されているのが、"ファーストレスポンダーシステム"だ。同システムは、事前に心肺蘇生の講習を受けている住民に「ファーストレスポンダー(初期対応者)」として登録してもらい、心臓停止の通報が入った際には消防本部からその地域の周辺にいるファーストレスポンダーに一斉にメール送信。すぐに現場にかけつけられる市民に心肺蘇生をしてもらう、というもの。4年前に石川県加賀市で導入されて以降、全国各地で広がりつつあるという。

(あなたの健康百科編集部)

関連リンク(外部サイト)