2016年10月14日 06:00 公開

「声」でうつ病が診断できる

 人の一生は「産声」から始まり、言葉の話せない乳幼児は、泣き声で空腹や体調の異常といった命に関わる重大な情報を周囲に伝える。成長してからも、「声」で人の気持ちを推し量りながら円滑な社会生活を営んでいく。今回、人の感情と深く結びついていると考えられる「声」のデータを使って、高精度にうつ病を診断できることが、経済産業研究所(東京都千代田区)などの共同研究グループにより明らかにされた。研究の詳細は、同研究所のホームページに掲載されている。

開発進む、声で人の感情を推測する「音声感情認識技術」

 うつ病の治療を受けている人は、2014年には116万人に上り、うつ病による社会的損失が問題視されている。診断には時間やコストがかかるうえ、医療者や患者の主観に大きく左右されるなど、客観性を欠くことも指摘されている。

 そのため、コスト削減につながるような、シンプルで効率的、かつ信頼性の高い診断方法がないか模索が続いている。そんな中、注目されているのが「声」による診断方法だ。

 近年、音声から人の感情を推測する「音声感情認識技術」の開発が進んでいるという。人の声の周波数などから、話している人の感情を識別するもので、企業のコールセンターに導入されるなど商業化の動きもあるようだ。

診断精度の向上を確認

 今回、共同研究グループでは、「音声感情認識技術」がうつ病の診断に活用できるかについて検証した。

 20~69歳の男女約2,000 人を対象に、2カ月おきに計3回、声を吹き込んでもらい、音声データを取得。同時に、うつ病のスクリーニングに使われる自己記入方式の質問票に答えてもらい、うつ病の状態に関するデータを取得した。

 そして、どのような音声パターンを持ち、どういった属性(性別や年齢など)の人がうつ病の可能性が高いのかを判断するため、音声データと属性、うつ病状態の有無を結びつけるような数学的な「公式」づくりを行った。

 同研究グループは、まず、初回と第2回目の調査で得られたデータの7割を用いて、最新の技術を駆使して「公式」を導き出した。続いて、残りの3割で、その公式が妥当かどうかを検証した。

 その結果、下に示すように、音声データを含まない「属性」だけによるうつ病の診断精度が中程度だったのに対して、音声データを取り入れた場合では、高精度の診断が可能となることが確認された。

 しかし、この公式を使って、第3回目の調査で得られた音声データと属性データを組み合わせてうつ病の状態を診断したところ、属性のみのデータと比較した場合、十分な精度が得られなかった。

 同研究グループは、「一定時間を経過した対象者に対するうつ病状態の診断には、音声感情認識のさらなる技術向上が必要だ」と前置きしながらも、「音声データを使うことで、高い精度でうつ病診断が可能であることを確認した。声による診断が実用化されれば、診断コストの削減や、より迅速で的確な治療につながる」として、臨床的および社会的にもたらされるであろう恩恵に期待感を示した。

(あなたの健康百科編集部)

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