2016年10月17日 06:00 公開

昨日の晩ご飯が思い出せなくなった人へ

認知と運動の融合「コグニサイズ」で認知症予防

 「最近スーパーに行ったのはいつ?」「昨夜の夕食のメニューは何?」。こう質問されて、とっさに思い出せず「あれ?」となってしまう人も多いだろう。単なる物忘れなのか、病気によるものか。急速に高齢化が進む中、日本でも認知症患者が年々増加し、予防策を講じる必要がある。先ごろ、横浜市神奈川区で行われた介護予防の普及と啓発のための講演会で、国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)予防老年学研究部の島田裕之部長が、認知症の発症予防に関する講演を行い、認知症発症前からの運動の重要性を訴えた。

軽度の認知機能低下なら、回復の可能性が

 冒頭で島田部長は、世界では急速な高齢化とともに、現在約4,700万人いる認知症患者の数が、2050年には1億3,000万人を超えると話した。新規の認知症患者が、約3秒に1人の割合で増える計算であるとの説明に、会場全体はざわめいた。

 認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)は、記憶力や注意力といった認知機能が低下した状態。最近スーパーで買ったものや、昨日食べたおでんの具が何だったかといった、日常生活の些細な記憶があやふやになったり、料理や掃除といった今まで問題なくできていた家事がテキパキとこなせなくなったりする。

 島田部長によると、単なる物忘れなのかMCIなのか、判断するのは非常に難しいという。認知症がなく、全般的に認知機能が保たれ、自立して日常生活を送れる人でも、客観的に見て認知機能の低下が感じられる場合、詳しい検査をした結果、21.1%がMCIだったという報告があるそうだ。

 ただ、MCIは認知症に移行しやすい反面、回復する可能性もあるという。70~90歳の高齢者437人を2年間追跡して、認知症への移行率を見た調査によると、認知機能の低下が軽度であれば、31.0~44.4%の人が正常な状態に回復したという。

 こうした調査結果から、島田部長は、「認知機能の低下を感じ始めたら、放置せず早めの取り組みを開始してほしい」と訴える。

 例えば、料理をするとき一度に何品かを同時進行でつくってみる、時間を設定して制限時間内に作業を終えるよう意識してみる、段取りを考えながら旅行の計画を立ててみるといったように、日常生活で工夫を試みるといいそうだ。

「コグニサイズ」は、楽しみながら頭と体を活性

 認知症の発症予防には、活動的なライフスタイルを身につけることが重要だ、と島田部長は言う。読書や楽器演奏などの認知活動や、社会参加、対人交流などが有効とされるが、中でも身体活動を向上させることが重要だという。

 島田部長が開発した「コグニサイズ」は、コグニション(認知)とエクササイズ(運動)を組み合わせた造語で、コグニション課題とエクササイズ課題の両方を同時に行うことで、脳と体の機能を効果的にアップさせようというものだ。頭を使いながら体を動かしたり声を出したりして、楽しみながら頭と体を活性化できるという。

 島田部長らが行った調査では、MCIの人がコグニサイズを行うことで認知機能や脳の萎縮に改善が見られたという。また、運動と認知症治療薬の効果を比較した海外の研究では、運動をしたほうが薬による治療に比べて、MCIがより改善したと報告されている。

 会場では、聴講者らがコグニサイズを体験した。椅子に座ったままの姿勢で、足踏みをしながら数を数えたり、50音を唱えたりして大いに盛り上がった。

 島田部長は「一緒に運動できる仲間を見つけて、少しずつでもいいから続けることが大事です」と話し、運動の大切さを強調した。

(あなたの健康百科編集部)

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