2016年10月18日 06:00 公開

乳幼児期が肝心! B型肝炎から子どもを守る

2016年10月から0歳児に定期接種がスタート

 今年10月から公費での接種が可能となったB型肝炎ワクチン。2016年4月以降に生まれた0歳児を対象に定期接種化が始まった。B型肝炎ウイルスは、慢性化してキャリア(持続感染者)になると、数十年かけて肝臓がんや肝硬変などの命に関わる病気を引き起こす。厚生労働省によると、日本の感染者は約130万~150万人と推定され、肝硬変や肝臓がんに進んだのはその10~15%とされている。一度感染すると、現在の医学ではB型肝炎ウイルスを体内から完全に排除することが困難なため、一度たりともウイルスを体内に侵入させないように、乳幼児期にワクチンで予防することが何よりも大切だ。このほど、東京都内で開かれた「B型肝炎予防」のセミナーからの報告。

なぜ今、定期接種化になったのか

 B型肝炎ウイルスは思春期以降に感染した場合、一過性で治癒することが多いものの、乳幼児期での感染には注意が必要だ。セミナーで講師を務めた済生会横浜市東部病院の乾あやの先生(小児肝臓消化器科部長)は「免疫機能が未熟な乳幼児期に感染するとキャリアとなりやすく特に5歳未満の子どもは持続感染となりやすい」と話す。

 B型肝炎ウイルスの感染経路は、出産の際に母親から産道で感染する「母子感染(垂直感染)」と、感染者の血液や体液に触れることによる「水平感染」の2つがある。1986年にはキャリアの妊婦から生まれた乳児に対して公費でのワクチン接種が行われるようになった。これ以降、母子感染による新規の感染者は大幅に減少したものの、その後の調査で子どものキャリア化が予想以上に進んでいることが分かり、母子感染だけでなく水平感染の防止のために予防ワクチン定期接種化が勧められた。

 B型肝炎ウイルスの水平感染では輸血や性行為といったイメージが強いが、家族間はもちろん、保育園・幼稚園などの集団生活の場でも感染する可能性はある。「尿、よだれ、涙、汗などが小さなキズに入りそこから感染するため、5歳以下の子どもたちが生活の場として多くの時間を過ごしている保育園や幼稚園などで感染するケースも考えられてきました」と乾先生。働く親の増加に伴い、多くの子どもが乳幼児の時期から保育園などに預けられるようになったことも予防ワクチン定期接種化につながったという。

 さらに、B型肝炎ウイルスに関連した死亡は特にアジアとアフリカに多く、海外からの渡航者が激増している日本では感染の危険性が高まっていることも、B型肝炎ワクチン定期接種の開始につながっている。感染者の多くは自覚症状がないので、自分が感染源であることを知らないのも問題だ。

 乾先生は「B型肝炎ウイルスキャリアの子どもが発がんすることも問題です。これまでの経験から、キャリアの90~80人に1人が発がんします」と話す。感染しやすい環境にある子どもをHBVから守るには、早めにワクチンを接種することが重要だ。

ようやく世界基準に

 世界保健機関(WHO)に加盟する194カ国中184カ国が全ての乳児を対象にワクチン接種を行っており、台湾などでは定期接種化から30周年を迎えている。「日本以外では、ほとんどの国で乳児期のB型肝炎ワクチン定期接種がすでに行われています。キャリア化を防ぐためにも、B型肝炎ワクチンは乳児期に接種することが大切です」と乾先生は強調した。なおWHOでは、2011年から7月28日を「世界肝炎デー」とし、ウイルス性肝炎の蔓延(まんえん)防止のための正しい知識の普及や啓発活動を行っている。

 B型肝炎ウイルスの恐ろしさは、感染に気づきにくいこと。その感染力はC型肝炎ウイルスやHIV(エイズウイルス)よりも高い。症状がないため、大人になってからの献血や健診で、初めて自分がキャリアであることに気づくことが多いという。キャリアの子どもでは発がんの危険性が高くなり、大人になってから肝臓がん、肝硬変などを発症することも、抗がん剤、リウマチの薬などの投与をきっかけにウイルスが再活性化することもある。乾先生は「お子さんの健康を生涯にわたって守るためにも、きちんと接種してほしい」と話す。

(あなたの健康百科編集部)

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