2016年11月16日 06:00 公開

歯のエナメル質、形成の謎をマウスで解明

次世代の歯科治療への応用にも期待

 歯は、エナメル質、象牙質、セメント質の3つの硬い組織からできている。そのうち、最も外側にあるエナメル質は、体の中で一番硬い組織だ。象牙質やセメント質は骨と同様に間葉系とよばれる細胞が作るのに対し、エナメル質は上皮細胞から作られる。不思議なことに、エナメル質は、毛や爪と同じメカニズムで作られる。このたび、東北大学の中村卓史准教授らは、米国の国立衛生研究所との共同研究により、歯のエナメル質がどのように作られ、歯の形状がどう作られていくかについて、マウスを使った実験で明らかにした。研究の詳細は、10月27日発行の科学誌「Journal of Bone and Mineral Research」(電子版)に掲載されている。

「エピプロフィン」という分子がカギ握る

 むし歯は、口の中の細菌が出す酸などで、歯のエナメル質が溶けることで始まる。エナメル質には神経がないため、虫歯になっても、初期には痛みを感じることがなく、知らぬ間に進行してしまうことが少なくない。そして、一旦エナメル質が破壊されると、再生させることができない。

 そのため、高い強度を持つエナメル質を再生させるためのさまざまな研究が進められている。

 研究グループは、今回、歯の発生に強く関わる「エピプロフィン」というタンパク質に着目し、エナメル質を形成したり、歯の形成をコントロールしたりする際に、エピプロフィンがどのような役割を果たしているのか解明することを目的に研究を行った。

 まず、マウスの遺伝子を操作して、通常、歯の唇側にしか現れない「エピプロフィン」が、舌側の細胞にも現れるようなマウスを作製した。

 マウスの歯を解析したところ、通常のマウスでは、前歯が湾曲して伸びるが、遺伝子操作を加えたマウスでは直線的、らせん状に伸びていた。また、遺伝子操作マウスでは、通常エナメル質が作られない部分にもエナメル質ができていた。奥歯を見ると、遺伝子操作マウスには、かみ合わせを左右する歯の上面の凹凸の形や歯の本数などに異常が見られたという。

 これらの結果から、エピプロフィンがエナメル質形成のカギを握るマスター分子であること、歯の形の作成に関わっていることが明らかになった。

 なお、研究グループは2008年に、エピプロフィン遺伝子のないマウスを作製し、歯の形成の解析結果を「The Journal of biological chemistry」(2008;283:4825-33)に報告している。エピプロフィン遺伝子のないマウスの歯は、エナメル質が形成されず、また、40本以上の過剰な歯が形成されていたという。

 今回の結果を踏まえ、研究グループは、「本研究をさらに発展させ、将来的には、むし歯などで溶けてしまったエナメル質を再生させたり、歯の再生治療が現実化した場合、再生する歯の歯冠(歯肉から出ている部分)だけでなく歯根の形までもコントロールしたりできる技術を開発するなど、次世代の歯科医療への応用につながる研究を続けていきたい」と今後の抱負を語っている。

(あなたの健康百科編集部)

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