NY最新健康事情
2016年11月23日 10:30 公開

NYの牛乳事情

 今年の10月末に、NY市クイーンズ区にある市内で唯一の牛乳工場が閉鎖されました。そのエルムハースト・ディリー社の牛乳は、8,300店で販売され、公立学校1,400校の給食に提供されていたほど大きく、歴史アル会社です。「長年、努力を続けてきたが採算が取れず、創業者の希望をかなえること(NY州で続けていくこと)が困難になった」と、同社のCEOは言います。同社のようにNYから姿を消した牛乳会社は、過去25年間で20社にも上ります。

税金や規制だけでない要因

 一方で、米国農務省(USDA)の2016年8月のレポートを開くと、米国の牛乳市場は成長しているのが分かります。主要23州の牛乳生産量は前年同月の1.9%増加。1頭の牛から取れる牛乳の量は、2003年以降で最高を記録しています。

 ではなぜ、NYから牛乳会社が次々と姿を消していったのでしょうか。

 まず第一の原因は、高騰する税金。牛乳工場に限らず、NY市で工場を営むのは簡単なことではありません。さらに、州当局による酪農業への厳しい規制もあります。

 また、健康問題に敏感なニューヨーカーは、州外から来る、成長ホルモンを投与されていない、牧草で育った健康な牛の乳を求めています。

 それだけでなく、ストアに並ぶ「牛乳以外のミルク」の激増も一因となっているようです。「牛乳以外のミルク」とは、穀物やナッツ類などから作られる「ミルク」のことで、こちらもニューヨーカーには人気です。

 こうしてみると、NY市に牛乳の工場があったことの方が驚きかもしれません。

牛乳は体に良い? 悪い?

 しかし、ここで問題にしたいのは「健康」です。「牛乳は腸の健康に良くない」「人間には必要ない」といった話も聞くのですが、本当でしょうか。成長ホルモンや、本来は牛の食べ物でない穀類を食べさせ、ストレスいっぱいな牛の乳が体に良くないことは納得できます。しかし、牧場で搾りたての甘くて清々しい牛乳までも人間の健康に悪いのでしょうか。

 ドミニカ系米国人のエリザベスとスペイン系米国人のナタリーは、子供が寝る前に牛乳を飲ませます。いわく、「心も体も落ち着き、歯の健康にも良い」「自分もそのように育った」とのこと。

 また、インドの医学である「アーユルヴェーダ」では、牛乳は「良い食品」とされています。牛を殺すことなく、時に乳の張った牛を助けることにもなり、とても平和的で栄養価の高い食物とされています。アーユルヴェーダの先生に「私は牛乳をやめて花粉症が出なくなりましたが、牛乳は本当に良い食品ですか?」と質問したところ、「温めてハーブを加え、少量ずつ飲むと良い。冷たい牛乳を一度に大量に飲んではいけない」と助言されました。

 今は、ショウガやハーブなどと一緒に温め、1日に少量をおいしく飲んでいます。さらに、先述の「牛乳以外のミルク」を楽しむ機会も増えました。

 税金高騰、規制強化、強い健康志向といったNYの環境が、最後の工場を閉鎖させました。しかし同時に、地方の会社の発展や、新しい商品を人々に提供するチャンスを生んでいるのかもしれません。

スタントン治子(すたんとん・はるこ)

 1967年、神戸市生まれ。1983年からインストラクター、トレーナーの仕事を開始。体が弱かった幼少期、股関節に障害を負った10代の経験から、体の構造、健康について学ぶ。1994年、東京にてパーソナルトレーニングサービス開始。女優・大竹しのぶさんや、ヴァージン・アトランティック航空元日本支社長(現香港エリアマネジャー)のポール・サンズ、チエコ夫妻ら多くの著名人・財界人にトレーニングを提供。2014年、結婚を期にニューヨークへ移住し、同地でもパーソナルトレーナーとして活動を開始した。「STANTON'S」代表、健康運動指導士、インド中央政府認定ヨガインストラクター。


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