2016年12月07日 06:00 公開

医師が教える、家庭での感染症対策

もう、インフルエンザやノロで慌てない

 師走に入り、寒さが一段と厳しくなるこれからの時期、心配なのはインフルエンザやノロウイルスなどの感染症。厚生労働省は、インフルエンザの今季の全国的な流行が始まったと発表している。子どもや高齢者がいる家庭では、特に気になるところだろう。脱水予防などに関する情報を発信する「教えて!『かくれ脱水』委員会」は先ごろ、インフルエンザやノロウイルスなどの感染症に対する正しい対処法や、二次感染を防ぐための予防法に関するセミナーを、小さな子どもを持つ母親向けに開催した。同委員会のメンバーである済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科の十河剛副部長が、家族が感染しても、家庭内で二次感染を防ぐために気を付けたいポイントなどを分かりやすく解説してくれた。

インフルエンザに加え、ノロウイルスも増加傾向

 10月以降、全国各地でインフルエンザやノロウイルスの集団感染が発生している。今シーズン、インフルエンザは既に流行期に入っていて、年明けに流行期が始まった昨シーズンに比べてかなり早かった。国立感染症研究所が発表したデータによると、11月14~20日の1週間に報告されたインフルエンザの患者数は1医療機関当たり1.38人となり、今シーズンで初めて、流行開始の判断となる1.0人を上回った。

 一方、ノロウイルスなどの感染による感染性胃腸炎の患者数も増加傾向だ。国立感染症研究所によると、11月7~13日に報告された感染性胃腸炎の患者数は、1医療機関当たり9.37人で、過去5年間の同時期と比べてやや多くなっているという。

出しっぱなしの食器にはウイルスが!?

 家族がインフルエンザやノロウイルスなどに感染したら、これ以上感染を広げないためにどうすればよいか。そして、家庭の中で気を付けるべきポイントとは?

 手洗い、うがい、マスクの着用を徹底することは基本だろう。うがいというと喉の洗浄というイメージがあるが、十河副部長は、「インフルエンザウイルスは高温多湿を嫌うので、喉を加湿することが有効となります」と説明する。

 キッチン・エリアでの注意点として、まずは食材の調理法を挙げた。カキなどの二枚貝はノロウイルスの感染源になりやすいため、しっかり加熱することが大事だという。また、大皿料理では、取り箸やトングの利用が有効だが、注意しなければならないのは、家族が感染症を発症している場合だ。感染症を発症している人が取り箸などに触れると、そこから感染が広がる恐れがある。「子どもが発症している場合は、大人が取り分けてあげて。子どもには触らせないこと」と十河副部長。

 洗い終わった食器にも注意したいポイントがある。ノロウイルスなどに感染している家族がいる場合、洗った食器を水切りかごに置きっ放しにしていると、乾燥して舞い上がったウイルスが食器に付着してしまう危険がある。空気中に広がったノロウイルスは、3~4日生きていて、その間は感染力があるという。そこで、長時間、食器を外に出したままにしたら、使う前に洗ったほうがよいそうだ。

 キッチン・エリアでのポイント
 ●カキなどの二枚貝は、しっかり加熱
 ●感染症を発症したら、取り箸などに触らない
 ●外に出したままの食器は、使用前に洗う

 続いて、トイレでの注意点について解説してもらった。トイレの水を流すと、ウイルスが想像以上に空気中に舞い上がる。そのため、必ずふたを閉めてから流すのがポイントだという。家族に感染者がいる場合、手を拭くタオルは家族別々のものにするが、「使い捨てのペーパータオルもお勧めです」と十河副部長。また、換気も有効だ。参加した母親からは「流す前にふたをするのは、パパにも徹底してほしい」との声が聞かれた。

 トイレでのポイント
 ●水を流す時は、ふたを閉めてから
 ●タオルは個々に
 ●換気を忘れずに

おう吐用の処理グッズは事前に準備

 子どもが急におう吐したら、大人も慌ててしまいがち。そんな時でも落ち着いて、まずは吐物に大判の消臭・防水シートをぱっとかぶせるのが、空気中にウイルスが飛散するのを防ぐポイントだという。そして、処理しやすい服装に着替えること。ウイルスが服の裾や袖口、足裏などに付着すると、そこからどんどん広がってしまう。処理が済んだら、付着したウイルスを落とすためにもシャワーや着替えが有効とのことだ。

 急な事態に備えて、事前にビニール袋や紙袋、マスクに使い捨て手袋、大判シートなどの処理グッズを一式揃えておくと安心だ。十河副部長は「専用のグッズもありますが、安価なものでも十分に対応できます。例えば、吐物を覆う大判シートは、ペットの排泄用シーツなどで代用するとよいでしょう」とアドバイスする。

 感染性胃腸炎が重症化しないために、気を付けなければならないのが「脱水」だという。おう吐や下痢を繰り返していると、体内の水分に加え、塩分も失われてしまう。「口が渇く、おしっこの量が減る、子どもではよだれの量が減るなどが、脱水のサインです」と十河副部長。脱水状態を避けるには、下痢やおう吐で出てしまった分だけ、塩分や糖分を含む「経口補水液」などの水分の補給が必要だという。

 自分で飲める3~4歳の子どもなら、下痢やおう吐が続いている間は、1回に5mL程度の経口補水液を5分おきに飲ませる。ペットボトルのキャップに軽く1杯が5mLの目安となる。1~2日でおう吐が治まってきたら、胃に負担のかからない食事を始める。その際に、「子どもの好物だからといって糖分の多いものばかりを食べさせると、回復が遅れることも。脂っこいものもしばらくは避けて」と十河副部長は注意を促す。

 急なおう吐でのポイント
 ●吐物の処理は手際よく
 ●処理後はシャワーや着替えで、付着したウイルスを落とす
 ●処理グッズのセットを事前に準備
 ●脱水予防に経口補水液などを

 どんなに気を付けていても、100%感染を避けることは難しい。いざという時のために、家庭での心得をしっかりと守り、感染の拡大防止に努めたい。

(あなたの健康百科編集部)