2016年12月20日 06:00 公開

自力での生活には、1日最低900歩を

 どんなに年を取っても、食事やトイレなど自分のことくらいは自分でできる自立した生活を送りたい―そう願わない人はいないだろう。私たちは普段の生活の中で、食事や排泄、移動、入浴、身なりを整えるなどの、日常生活を送るために必要な最低限の動き「日常生活動作(ADL)」を、特に意識することなく行っている。ところが、加齢や病気などによりADLが低下してしまうと、人の手を借りなければ生活できなくなり、自力での生活が難しくなる。この度、イスラエルのハイファ大学などが高齢者のADLに関する研究を行った。それにより、高齢の入院患者では、1日の歩数が900歩未満になるとADLの低下につながることが分かったという。研究の詳細は、2016年12月5日に発行された医学誌「JAMA Internal Medicine」(電子版)に掲載されている。

1日900歩以上で、入院関連の機能低下がわずか18%

 年とともに体力や気力が衰えれば、外へ出るのが億劫になる。最近の研究では、介護を必要とするまでは行かないが、体重が減り、筋力や気力などの低下が見られる「フレイル」状態の高齢者や、内科病棟に入院中の高齢者の場合、標準的な歩数は1日900歩であることが示されている。

 今回、研究の対象となったのは、2015年10~12月に北イスラエルの大学病院の内科病棟に入院した、65歳以上の患者177人。最長で3日間、足首に加速度計を装着し、1日の歩数を算出。また、認知機能やADL、安静時以外の全ての活動量(身体活動量)を測定した。そして、ADLを表すスコア(100点満点で、点数が低いほど介助が必要)が退院時に5点以上低下している場合を、入院に関連した機能低下と定めた。

 測定の結果、1日の歩数は0~8,111歩と幅が大きかった。1日の歩数が900歩未満の人は74人(41.8%)、900歩以上の人は103人(58.2%)。平均年齢はそれぞれ77.2歳と74.1歳だった。

 発病前のADLスコアは 、1日の歩数が900歩未満の群では平均78.4で、900歩以上の群では平均93.6だった。発病前の身体活動をはじめ、買い物や服薬管理などADLより複雑な動作を表すスコア、入院期間、抑うつ状態を表すスコアなど、多くの項目で両群間に大きな差が見られた。

 入院に関連した機能低下が見られたのは、1日の歩数が900歩未満の群で55.4%(57例)だったのに対して、900歩以上群ではわずか18.4%(14例)だった。1日の歩数が900歩未満の場合、入院に関連して機能が低下するリスクが、900歩以上の場合と比べて4.7倍高かった。

 研究グループは、今回の研究の限界点として、単一施設で、発病前のADLスコアが比較的良い高齢者を対象とした点を挙げ、「今後は、より幅広い高齢者の集団を対象に、研究を行うべきだろう」とコメントしている。

 「失ってみてはじめて、その有り難みが分かる」とは、よく言われることだ。日常生活の中で何気なくやっている動作、例えば食べることやトイレに行くこと、お風呂に入ることなどを自分一人でできることがいかに重要か、そのことを自覚することが、実はものすごく意味のあることなのかもしれない。

(あなたの健康百科編集部)

関連トピックス