バンコク発Drワタリの健康見聞録
2016年12月27日 10:00 公開

身近に迫るデング熱

 年始年末の休暇を利用して、東南アジアなどの暖かい地域に行く人も多い時期ですが、気をつけていただきたいのが、やはりデング熱です。

 2014年夏、東京でデング熱の国内感染例が69年ぶりに報告され、2016年7月には30代女性が海外旅行先のフィリピンでデング熱の感染により亡くなっています。

 また、意外と知られていないですが、沖縄の石垣島からわずか280km(東京から豊橋あたり、新幹線ならのぞみで約1時間半の距離!)のお隣台湾では2015年に4万人以上がデング熱に感染し、209人が死亡するという大流行がありました。ということは...今後日本への影響は容易に想像できますね。いやもしかしたら、すでに国内で存在していて軽症の風邪と診断され、認識されていないだけの可能性もゼロではありません。

何がどう恐怖なのか?

 こうしたニュースがあるたびに、デング熱について質問される事が多くなってきています。そこで、今回はデング熱のお話をすることにしましょう。

 デング熱を恐怖に感じる理由の一つには、いつの間にか蚊に刺されて感染してしまう事だと思います。媒介する蚊はヒトスジシマカ、ネッタイシマカの2種類ですが、日本では後者が生存していないとされる為に、今後国内で流行が予想される場合は東北地方以南に存在する前者のヒトスジシマカが重要なキーマンとなるでしょう(人ではないですが)。

 デング熱は蚊に刺されてから約7日±4日程度で発症するとされます。症状はズバリ言い切ると、かなり辛いインフルエンザ症状+赤や白っぽい皮疹です。具体的には、発熱、節々の痛み、頭痛(特に目の後ろと表現される)、皮疹です。

 デング熱を診断することの多いタイなどの現地の医師達が診断の際に重要視するのは、くしゃみ、鼻水、痰などの鼻や喉の症状がほぼ無い事で、これがインフルエンザや風邪との違いとされています。

 しかし、恐怖イメージと異なって基本的には自然治癒する事が殆どなのです。インフルエンザと異なる点は血管から水成分が漏れだし血圧が下がり、血小板という血を止めやすくする細胞が極端に減少し、「デング出血熱」になり死に至る点があります。そのため、感染した場合は対応に不慣れな日本では入院し丁寧に経過を見ていく事が必要でしょう。

 とはいえ、現段階において国内でデング熱にかかる可能性は極めて低いため、海外(アフリカ、南米、東南アジア等)渡航時の感染予防と持ち込み予防が一番重要です。 

現地調達の虫よけ薬が正解

 私は大学院のフィールドワークの一端でミャンマー国境沿いの蚊の幼虫を調べに行きましたが、廃棄タイヤや水瓶、ペットボトルの水たまりの中におびただしい数の蚊の幼虫を確認し、ぞぞぞっーと全身痒くなったのを覚えています。

 もちろん、このような蚊が発生しそう所に近づかないのが一番なのですが、観光などで自然が多い地域で過ごす場合は長袖、長ズボン等を着用し、現地の虫よけ薬を使用しましょう。

なぜ現地のを?と疑問に思われるかもしれませんが、日本では虫よけ成分DEETには規制があり12%程度と効果が十分ではなく、多くの国では20%の以上のものが簡単に安く購入できるはずですので、濃度の高いものを使った方が確実です。 

 ちなみに、デング熱を疑うポイントですが、熱帯気候の海外で蚊に刺された後7日前後で症状が見られた場合は、最寄りの医療機関を受診し、海外に滞在していた事を必ず医師に伝えていただければと思います。

和足孝之(わたり・たかし)

2009年 岡山大学医学部卒業(学士編入学)。湘南鎌倉総合病院での研修を経て、東京城東病院総合内科の立ち上げ業務後、熱帯医療を体感するためタイに渡り、マヒドン大学臨床熱帯医学大学院で学ぶ。2016年帰国。現在、島根大学医学部卒後臨床研修センター教育専任医師。関東50以上の救急病院で断らずに当直業を行い、医療システムと様々な病院における問題を実感しその提起をブログなどでも発信している。熱血&闘魂という言葉をこよなく愛する暑苦しい3児の父。


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