2017年01月06日 06:00 公開

採血で分かる「死にたい気持ち」

九大・阪大・NCNP共同研究、うつ病重症度の血中代謝物を特定

 だるい...何もやりたくない...悲しくなる...今やうつ病は誰もがかかる可能性があり、「心のかぜ」と言われることも。気分の落ち込み、喜びや意欲がなくなり、症状が進行すると自分を責める罪悪感や、ときには「死にたい気持ち」など様々な症状が出現する。このたび、うつ病の重症度や「死にたい気持ち」に強く関連する血中代謝物を特定したと九州大学、大阪大学、国立精神・神経センター神経研究所の研究グループが医学誌「PLOS ONE」(2016 Dec 16;11)に発表した。

抑うつ気分、罪悪感などの症状によって異なる血中代謝物

 重症になるほど自殺の危険性が高くなり、周りの人が早く病気の進行に気付いてあげることが求められる。しかし一般的には、本人の態度や主観的な訴えに基づき、専門家との診察・面接で重症度が評価される。そのため、評価が難しいことも稀ではなく、簡単で客観的な評価方法が開発されることが期待されている

 同グループは、九州大学、大阪大学、国立精神・神経センター神経研究所の3施設のうつ病や躁うつ病患者90人から採血を行い、微量の血液成分から数多くの代謝物を計測できるメタボローム解析により、うつ病重症度に関連する血中代謝物を発見した。

 3つの医療研究機関それぞれの患者において、血中代謝物と抑うつ重症度の関係性を調べたところ、抑うつ重症度に関連する血中代謝物を20種類に定めた。特に、3-ヒドロキシ酪酸、ベタイン、クエン酸、クレアチニン、γ-アミノ酪酸(GABA)の5つの代謝物は抑うつ重症度に強く関連することが分かった。3-ヒドロキシ酪酸は、血中にある代謝産物で、ケトン体の1つ、絶食・飢餓時にエネルギー源が枯渇すると肝臓で作られ、脳のエネルギー源として使われる。

 さらに、抑うつ気分、罪悪感、死にたい気持ち(自殺念慮)などそれぞれの症状によって関連する代謝物が異なることを発見した。例えば、自殺念慮では、脳内免疫細胞ミクログリアとの関連があるキヌレニン経路の代謝物が顕著に関連していたという。ミクログリアは脳内に存在する免疫細胞で、感染やストレスなど様々な要因により活性化すると炎症性サイトカインなどを産生し、過剰になるとニューロン傷害が引き起こされることが知られている。

代謝物を調整する食品や新しい治療薬開発への期待

 うつ病の治療には早期発見、早期介入が重要だが、多くの患者が最初に受診するのは精神科以外の診療科であるため、治療が遅れてしまうこともある。研究グループでは「近い将来、精神科以外の医療機関や健診で抑うつ状態の客観的評価が出来るようになれば、うつ病を早い段階で発見し、介入することが可能になる」また「代謝物の動態を調べることで、うつ病の病態メカニズム解明が進み、代謝動態を調整する食品や新しい治療薬開発も期待できる」としている。

(あなたの健康百科編集部)