2017年01月16日 06:00 公開

胃がん治療に光明か

神経ストレスでがんの進行が加速、そのメカニズムを解明

 胃がんの患者数は近年、減少傾向にあるようだが、欧米諸国に比べると依然として多い。抗がん剤や放射線治療が効かないケースもあり、従来の治療とは違うアプローチが必要とされている。そんな中、東京大学医学部附属病院消化器内科などの共同研究グループは、神経ストレスと胃がんの進行とが密接に関連していることやそのメカニズムについて、マウスを使った実験で明らかにした。本研究の詳細は、12月16日発行の医学誌「Cancer Cell」(電子版)に掲載されている。

神経細胞からの強いストレス刺激で、がん細胞の成長が加速

 人の神経細胞は全身に分布していて、胃腸には1億個以上が存在し、胃腸の動きや消化ホルモンの分泌を調節している。以前から神経ストレスががんをはじめ、さまざまな病気の原因になりうると言われていた。しかし、その理由はよく分かっていなかった。

 そこで今回、共同研究グループは、胃がんの進行と神経ストレスの密接な関連やそのメカニズムを明らかにするため、マウスを使った研究を行った。

 まず、マウスの胃がん組織を詳しく観察したところ、胃がんが進行する過程で、がん細胞が「神経成長因子(NGF)」というホルモンを産生し、それに反応した神経細胞ががんの組織に集まってきた。すると、がん細胞は、神経細胞からの強いストレス刺激を受けることで成長が加速していった。このように、神経細胞とがん細胞が互いに作用し合いながら、がんを成長させていることが明らかになったのだ。

 さらに、このNGFの働きを抑える薬を与えたり、神経ストレスを放出する細胞を取り除いたりすると、マウスの胃がんの進行は抑えられた。

 同研究グループは、今回の結果について「これまで明らかにされていなかった、神経ストレスが胃がんに与える影響とそのメカニズムについて詳しく解明することができた」と評価し、さらに「がん細胞の増殖を直接抑える従来の抗がん剤に加えて、神経細胞との相互作用を抑えるような薬を使うことで、胃がん治療に対する効果を高めることができるかもしれない」と、未来の治療に期待を寄せた。

 実際、NGFの働きを抑える薬は、すでに人での試験や実際の臨床現場でさまざまな病気の治療に使われており、胃がんに対しても早期の臨床応用が待たれる。

(あなたの健康百科編集部)