バンコク発Drワタリの健康見聞録
2017年01月20日 10:00 公開

タイの健康グッズ&意識と薬局問題

 バンコクの街を歩いていると必ず見かける風景があります。片方の鼻穴に何か棒みたいな物を突っ込んで歩いている人々、一見、鼻をほじっているようにしか見えません。キレイな女性達も、あっちでほじほじ、こっちでほじほじ。

 さすが美容意識の高いタイ、鼻の穴の中までで美しさを保つ為に余念がないのかと思っていましたがある日、勇気を出して、鼻に棒を入れているタイ人の指導医に聞いてみました。

暑さに負けないため? の工夫

 実はコレはヤードム(タイ語で嗅ぎ薬という意味)と呼ばれるもので、薬局で20バーツほどで売っています。鼻の中がスースーして気持が良いのだとか。メントール的な成分が入っており、鼻の中に入れるとたしかに一瞬で全てを忘れさせる爽快感があります。

 激辛の料理を好んで食し、気温40℃を越える暑いタイで少しでもスッキリ気持ちよく過ごす為に広がった知恵と習慣なのだと理解しました......。

 また、最近では「無料集団エアロビクス」が流行しており、あっちこっちで無料のインストラクターが台に上り踊っている集団を目にします。

 そんな元気なタイも2016年10月13日は、悲しみに沈みました。プミポン国王が逝去されたのです。18歳で即位し、70年という長きにわり国王を勤め、多くの国民に愛されていました。その国王が亡くなったため、国民は喪に伏し、多くの人が黒い洋服を着ていました。病院も例外ではありません。国立機関のHP、個人のSNS、LINEなどがモノクロになっているものもあり、この喪中機関は1年間といわれています。

どんな薬も薬局で買える・・・そのメリットとデメリット

 ところで、なんとタイの薬局では日本で医師の処方箋を必要とする多くの薬を誰でも買えてしまいます。例えば、僕らが頻用するような抗生物質を好きなように子供の熱が出たからといって薬剤師に相談して色々購入していきます。しかも都市部では24時間やっている店もあり、症状が軽度の場合には病院に行くこと無く市民の強い味方となっています。

 フルタイム学生であった私も次男が電気調理器で大火傷を負った時に自分で病院と同じ医薬品を買ってきて処置したり、長男がかなり激しい伝染性膿痂疹(とびひ)になった時にも薬局で自分が処方する薬を購入して治療しました。その値段は日本で病院にかかった事をと比較すると5分の1から高くて3分の1未満で済んでしまいます。

 しかし一方で、誰が薬の妥当性を判断し、副作用を管理するかという問題や、薬が効きにくくなる「耐性化」という大きな問題も出てきています。

 例えばマラリアを心配した人が診察を受ける事も無く抗マラリア薬を自己判断で内服したり、好きに中断したりする事でマラリア原虫が薬への耐性を獲得してしまいます。バンコク近郊は東京に匹敵する大都市ですのでマラリアにはかかりませんが、ミャンマーやラオスとの国境沿いはマラリアにかかっても自己判断で薬を飲む、飲まないといった事が繰り返されている為に薬が効かないマラリア原虫が生まれやすく世界中からも問題視されております。

 とは言っても、地方農村部ではお金をかけずに出来るだけの対処を行う事が大事で、都市部と農村部の所得格差が激しい事、インフラ整備の問題からは単純には批判できず、そして解決できない問題の一つでもあるのです。

和足孝之(わたり・たかし)

2009年 岡山大学医学部卒業(学士編入学)。湘南鎌倉総合病院での研修を経て、東京城東病院総合内科の立ち上げ業務後、熱帯医療を体感するためタイに渡り、マヒドン大学臨床熱帯医学大学院で学ぶ。2016年帰国。現在、島根大学医学部卒後臨床研修センター教育専任医師。関東50以上の救急病院で断らずに当直業を行い、医療システムと様々な病院における問題を実感しその提起をブログなどでも発信している。熱血&闘魂という言葉をこよなく愛する暑苦しい3児の父。