2017年02月10日 06:00 公開

脳への電気刺激で食べ過ぎ阻止

過食症治療に光

 むちゃ食いと、嘔吐や下剤の多用を繰り返す「神経性過食症」。摂食障害の1つで、異常なまでの食への欲求を自分では抑えることができない。もしかしたら、あなたの身近にも、密かにこの病気に苦しんでいる人がいるかもしれない。そんな過食症患者にとって朗報となりそうな研究結果が、このほど、英国ロンドン大学の研究グループから報告された。過食症患者の頭皮の上から弱い電気を流し刺激を与えると、一時的に過食症の症状が改善するという。詳細は、1月25日発行の医学誌「PLOS ONE」(電子版)に掲載されている。

tDCSの効果を検証

 その方法とは、経頭蓋(けいとうがい)直流電気刺激法(tDCS)と呼ばれる、頭蓋骨の上から極めて微弱な直流電気を流して脳を刺激するもの。うつ症状の改善や運動機能障害のリハビリテーション、記憶力の向上といったことへの効果が報告されている。

 神経性過食症患者の病的な過食行動は、報酬や自制の神経回路の変化で起こることや、脳の背外側前頭前野(DLPFC)という部分の神経回路の機能的変化で引き起こされることが、これまでの研究から示されている。ということは、脳のDLPFC部を微弱な電気で刺激すれば、過食症状が改善するかもしれない。

 そこで、研究グループは、18~48歳の過食症患者39人(うち男性2名)を対象に、1回20分のtDCSを実施。参加者には、次の3つのセッション―①右側のDLPFC部に陽極/左側のDLPFC部に陰極(AR/CL)、②左側のDLPFC部に陽極/右側のDLPFC部に陰極(AL/CR)、③実際には電気を流さない疑似―の全てを受けてもらった。1つのセッションが終了してから次のセッションまでは、2日以上空けた。

 各セッションの直前と直後に、過食の欲求、体重が増えることへの恐怖、気分などについて調査した。また、各セッション終了24時間後には、実際の過食行動の頻度や嘔吐、下剤の使用状況などを調べた。

 その結果、②AL/CRおよび③疑似のtDCSを受けた場合と比較して、①AR/CLのtDCS施行後には、摂食障害に対する認知に改善が見られた。

 また、①または②のtDCSセッションを受けると、一時的ではあるものの、自己申告による過食の衝動が減り、自己規制で過食をコントロールできるようになった。

 ③の疑似刺激と比較して、①AR/CLによるtDCSの後で、気分や感情に改善が見られた。一方、②AL/CRによるtDCSの後では、そうした改善は見られなかった。

 tDCSを実施した24時間後では、食べ物への執着や、過食行動に対する効果を見ると、①~③の3つのセッションで違いはなかった。

 今回の結果について、研究グループは、「tDCSは、1回の実施で神経性過食症の症状を、少なくとも一時的には改善できることが示された」と述べるとともに、「なぜ過食行動に及ぶのか、そのメカニズムを解明したり、最適な電極の取り付け方を検討したりする際に、本研究が役立つだろう」と評価した。

 さらに、研究グループは「複数回のセッションを行い、治療効果がどれくらい続くかについて検討を重ね、tDCSが成人の神経性過食症患者に対する治療として有効か否かを見極める必要があるだろう」と今後の課題を示した。

(あなたの健康百科編集部)