2017年02月16日 06:00 公開

「やる気スイッチ」はどこにある?

脳損傷による意欲障害のメカニズムを発見

 何を言っても、何をやっても、一向に勉強しないわが子。子どもの勉強の「やる気スイッチ」はどこにあるのか、果たして存在するのかも怪しい・・・・・・さらに、自分自身の「やる気スイッチ」でさえ、どこにあるのか・・・・・・。この意欲を制御する「やる気スイッチ」について1つの発見が報告された。大脳のある限られた領域の細胞集団が障害を受けると意欲が障害されること、この細胞集団が健康でないと意欲を維持できないと慶応大学らの研究グループが科学誌(2017 Feb 1;8)に発表した。

「やる気がない」症状へつける薬なしの現状

 認知症や脳血管障害、脳外傷などではいわゆる「やる気がない」という症状(意欲障害)が出現する。その原因については、脳が広範囲に障害を受けたときに起こるということ以外分かっていない。そため、患者自身のリハビリテーションへの意欲や生活の質を低下させ、さらには介護者の意欲を削ぐ結果となっていることが多々見受けられた。

 うつ病に伴う「やる気がない」症状については、抗うつ薬という治療の選択があるが、脳の損傷によるこうした症状については、どんな薬が有効で、何が効かないかなど治療薬について全く分かっていない状況であった。それは、脳の損傷による意欲障害が、どのようなメカニズムで、どのように発生するのか全く分かっていないからだったという。

 同研究グループは、運動制御や報酬を計算する脳部位で、大脳皮質の脳深部にある線条体を構成する細胞集団の1つであるドパミン受容体2型陽性中型有棘ニューロン(D2-MSN)に着目し、これを人為的に制御することのできる遺伝子改変マウスを作り出し、「やる気」を測定する実験を行った。

線条体を構成する細胞集団の1つ、D2-MSNが「やる気スイッチ」

 マウスには、あらかじめ次の課題を学習させた。1個目の餌を得るのにレバーを1回押す、2個目を得るためには2回、3個目を得るのに4回、4個目を得るには6回・・・・・・とレバーを押す回数を増やしていく。例えば、14個目の餌を得るには95回レバーを押す必要があり、餌を得るのを諦めるまで頑張った回数が意欲の程度を表す。意欲が下がると諦めるまでのレバーを押す回数が減るということになる。

 この課題を使って、マウスの「やる気」レベルを調べた後、D2-MSNだけを細胞死させ、意欲の低下が線条体のどの部位の損傷で、どの程度の損傷の大きさで起こるのかを調べた。

 結果、線条体の細胞集団の17%の細胞死により、意欲障害が起きていることが分かった。さらに、D2-MSNが意欲行動の制御に深く関係していることが分かったという。つまり「やる気」はD2-MSNがその「スイッチ」としてなっていることが明らかになったという。

 脳の損傷による意欲障害のメカニズムが明らかになったとことで、研究グループは、脳障害による意欲障害を改善する薬剤の探索に役立てることができるとしている。

(あなたの健康百科編集部)

関連トピックス