2017年02月20日 06:00 公開

外見も重視、がん患者「アピアランスケア」

「見た目」の悩みに寄り添い、患者をサポート

 がんの治療技術が進歩し、生存率が大きく改善している。がんの治療をしながら生活する人や職場に復帰する人も増えてきた。そんな中、抗がん剤治療を受けるがん患者に対して、副作用による外見の変化をケアする動き(アピアランスケア)が注目されている。先ごろ、湘南記念病院(鎌倉市)乳がんセンターの土井卓子センター長が講演し、あまり認識されていないがん患者が抱える外見の変化に対する悩みや、ケアがもたらす効果について、アンケート結果を交え解説した。

がん治療で起こる肌トラブルや見かけの変化

 国立がん研究センターがん対策情報センターによると、現在、日本では年間9万人が乳がんを発症している。日本人女性の11人に1人が、生涯で乳がんを経験するといい、乳がんはだれもがかかる可能性のある病気だ。一方、部位別で見ると、乳がんの死亡数は5位と、早期に発見し治療すれば治りやすいがんとも言えるようだ。

 乳がんの手術後は、傷の周辺だけでなく、広い範囲で皮膚が薄く乾燥しやすい状態になっているという。術後に放射線治療を受ける場合には、皮膚の乾燥に加え、肌が黒ずんだり、引きつれたりすることもある。

 また、ホルモン剤を服用すると、更年期特有のホットフラッシュ、不眠といった症状が現れたり、肌の乾燥が進み、肌荒れが起こったりする。土井センター長は、肌の乾燥に対して、「とにかく、しっかりと保湿をすることです」と話す。

化粧で「元気スイッチ」をオンに

 抗がん剤による治療では、さまざまな外見の変化が起こってくる。髪や眉、まつげなどが抜け、顔には吹き出物やしみができたりもする。爪が変色したり抜け落ちたりすることもある。そうした外見の変化に、たいていの人は落胆し、元気をなくしてしまう。

 同施設では、がん患者に対して、「お化粧教室」を開催しているという。参加する患者は、はじめは元気がなく、体調も悪そうにしている。

 ところが、顔のしみを消し、眉を描き、口紅をつけていくと、みるみるうちに表情が明るくなり、背筋もピンと伸びてくるそうだ。「化粧をすることで、患者の元気スイッチが入り、治療に前向きに取り組めるようになるのです」と土井センター長は、外見をケアすることの効果を評価する。

外見の変化に悩む患者は半数―アンケート

 それでも、顔や手など、帽子や衣類などで隠すことのできないところに黒ずみなどの変化が出てしまう人もいる。人前に手を出さなければならない接客業を含め、仕事によっては就労に支障を来すなど、問題点は少なくない。

 特定非営利活動法人メディカルメイクアップアソシエーション(東京都中央区)が行った抗がん剤治療による外見の変化に関する意識調査では、「外見の変化は社会復帰にあたっての悩みである」と回答したがん患者は、全体の48.3%だった。実際に対策をしていると答えたのは44.7%。女性では、医療用ウィッグを着用している人が48.0%と半数近くに上ったが、皮膚の変色に対するメイクアップをしている人は25.0%、爪のケアをしている人は18.6%と少なかった。

 この結果について、土井センター長は、「治療による見た目の変化や肌のトラブルに対して、まだまだケアが十分でないことが分かりました。がんにかかる女性が増える中、上手なケアを行うことは、がん治療にとっても、患者の生活の質の改善にとっても重要です」とコメントしている。

治療継続につながる見た目ケア

 がん治療による見た目の変化は、患者の人生に大きな影響を与えてしまう。しかし、ウィッグを着ける、きれいに化粧をするなど、外見を整えることで、治療へのモチベーションアップにつなげることができるという。

 がんの治療効果を高めるには、いかに治療を継続するかがカギとなる。土井センター長は、「患者の見た目を改善する『アピアランスケア』が、患者の人生を支えます」と、治療以外でのサポートの重要性を強調するとともに、「医療者もそのことをもっと理解しなければならない」と、医療者側の課題を示した。

(あなたの健康百科編集部)