2017年02月23日 06:00 公開

重いうつ病に、薬以外の選択肢

認知行動療法の効果を検証

 うつ病と診断され、薬を処方された。きちんと飲んでいるのにちっともよくならない、薬の量がどんどん増えていく、いつまで飲み続けなければならないのか―。うつ病を治療中の人の悩みは尽きない。そんな中、京都大学の古川壽亮教授をはじめとする研究グループから、うつ病の治療に関する新たな研究結果が報告された。ものごとに対するとらえ方(認知)を修正することで気分や行動を変化させる「認知行動療法」が、うつ病の重症度の高い低いにかかわらず、同程度の効果を得られることが明らかになったという。詳細は、1月19日発行の医学誌「The British Journal of Psychiatry」(電子版)に掲載されている。

555人のデータを解析

 認知行動療法は、うつ病に対する有効な精神療法として注目されている。人の反応の4つの側面―①ある出来事に対する身体の反応、②どのように考えるかという認知、③出来事に対して持つ感情、④実際にとる行動―のうち、本人が意識してある程度コントロールできる認知と行動に働きかける治療法だ。うつ病のほか、パニック障害や糖尿病など生活パターンに起因する生活習慣病の治療などにも応用されているという。

 この認知行動療法が、軽度のうつに効果をもたらすことは既に知られているが、症状が重い人にどの程度の効果があるのかは不明だった。診療ガイドラインでも、重いうつの場合には、まず薬による治療が推奨されており、多くの場合、認知行動療法は治療の選択肢には入っていない。

 これまで行われてきた治療前のうつ病の重症度に着目した研究は、抗うつ薬の効果検証を目的としていた。そのため、認知行動療法とうつ病の重症度の関係に着目した研究は行われていなかった。

 今回、研究グループは、1989~2006年に実施された5つの関連研究のデータを解析し、認知行動療法がどの程度の効果を持つのかについて調べた。

 解析の対象となったのは、一定の重症度がありうつ病と診断された509人と、比較的軽度の抑うつ状態である気分変調症と診断された46人の計555人で、平均年齢は40歳前後だった。

 治療効果の指標である「治療必要数(治療によって、1人が効果を得るために、治療を施す必要がある人数)」に換算すると、認知行動療法は、重度のうつ病に対しても、軽度のうつ病に対しても12という値だった。つまり、認知行動療法は、うつの重症度に関係なく、同程度の効果を上げていることが分かった。

 また、一般的に使われる抗うつ薬の治療必要数は7~9で、薬物療法と認知行動療法との効果の差も、これまで考えられていたほど大きくないことが判明したという。

 研究グループは、「今後は、治療を受ける本人の意向によっては、うつ病の重症度にかかわらず、認知行動療法も治療の選択肢になる可能性がある」とコメントしている。

 薬物治療を続けても、なかなか思ったような効果が得られず、思い悩んでいるうつ病患者にとって、今回の結果が、一筋の光となってくれるかもしれない。

(あなたの健康百科編集部)