2017年03月09日 06:00 公開

ADHDは脳の障害が原因?

最大規模の研究で確認

 親の言うことを聞かず、走り回るわが子に向けられる冷たい視線・・・・・・。親のしつけがなっていない子というレッテルを貼られ、肩身の狭い思いをする親子にとって注意欠如・多動性障害(ADHD)への理解が進むことは、日々の生活をもっと過ごしやすいものにする。このたび、過去最大規模の研究で、ADHDは脳皮質下の5領域の容積が顕著に小さいことが明らかになったとオランダの研究グループが医学誌「Lancet Psychiatry」(2017年2月15日オンライン版)で報告した。同氏らは「ADHDは複数の脳領域の発達遅延を伴う脳障害と見なすべき」として、この知見をADHD患者に対する偏見の払拭に役立ててほしいと強調している。

扁桃体で最大の容積減少

 ADHD患者は情動や随意運動、認知機能を司る脳領域である大脳基底核の尾状核および被殻が小さいことが示されているが、これまでの研究はサンプル数が少なく、評価方法が統一されていないという限界があった。

 そこで、同研究グループらは国際研究グループENIGMA ADHD Working Groupを組織し、欧州諸国および米国、中国、ブラジルなど世界各国の23の施設でADHD患者1,713人および対照グループとして非ADHD患者1,529人(年齢平均14歳、4~63歳まで)の脳MRIデータを収集し、解析した。

 主要評価項目は、ADHDとの関連が考えられる皮質下の7領域(淡蒼球、視床、尾状核、被殻、側坐核、扁桃体、海馬)の容積および頭蓋内容積とした。

 解析の結果、ADHD患者グループは対照グループに比べて側坐核、扁桃体、尾状核、海馬、被殻の容積および頭蓋内容積が明らかに小さかった。淡蒼球および視床では顕著な差は認められなかった。

15歳未満で有意差、大人では差が認められず

 年齢別解析では、小児(15歳未満)は大人(21歳超)に比べて側坐核、扁桃体、尾状核、海馬、被殻および頭蓋内容積の効果量が大きかった。淡蒼球および視床では小児と成人の間に差が認められなかった。また、小児では前述の5領域および頭蓋内容積に関してADHD患者グループと対照グループとの間で有意差が認められたが、大人ではいずれの容積に関してもADHD患者グループと対照グループとの間で有意差が認められなかった。

 過去の研究ではADHDに対する薬物療法と脳容積との関連が示されていたが、今回の脳容積減少は精神刺激薬の使用とは無関係に認められた。また、症状や他の精神疾患の有無とも無関係で、脳容積の減少が併存疾患に続発するものではなくADHD自体に関連することが明らかになった。

ADHD児は『困った子』や『しつけに問題ある子』ではない

 研究グループによると、扁桃体は情動刺激への反応という点で、また報酬系の処理に重要な役割を果たす側坐核は動機付けおよび情動の障害という点でADHDに関連し、海馬はそれほど明瞭ではないが動機付けおよび情動の制御障害という点でADHDに関連している可能性があるという。

 同グループはADHDは複数の脳領域の発達遅延を伴う脳障害であるとの見解を示し、「今回の結果は、ADHD児は困った子、あるいは親のしつけがなっていない子という偏見を払拭するのに役立つのではないか。ADHDへの理解を深めるのに役立てば幸いだ」と述べている。

(あなたの健康百科編集部)

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