2017年04月07日 06:00 公開

「生殖器を取り除く」などの治療に保険適用を

日本精神神経学会が性同一性障害の治療に要望書を提出

 日本でもセクシャリティに対する認知や関心は高まりつつある。「性同一性障害特例法」を使って戸籍の変更をすれば、結婚などのほとんどの問題をクリアできるのではないかと安直に考えてしまうが、そう簡単に戸籍は変えられるものではないようだ。例えば、その身体的条件の1つに、「生殖器を取り除いていること」という条件があるが、現在もなお、その治療は保険適用されず自費診療が続いている。こうした事を問題視した日本精神神経学会は、厚生労働省に対し、3月18日付で性同一性障害の治療を目的としたホルモン療法や手術について保険適用を求める要望書を提出した。

経済的負担が大きすぎ断念する人も・・・望む性別で社会適応を

 日本精神神経学会はこれらの治療について、「患者の身体上の不快感を軽減し、望む性別での社会適応が容易になるといった効果について、国際的なコンセンサスは得られている」と説明。「現在は自費診療で行われているが、経済的負担が極めて大きいために治療を断念し、低い社会適応状態のまま生活する当事者が後を絶たない状況を考慮してほしい」としている。

同学会が健康保険の適用を求めている項目は次のとおり。

  • 性同一性障害症例に対するホルモン療法。すなわち、女性として生活したいと希望するMale to Female Transsexualism(MTF)性転換症の症例に対してはエストロゲン製剤の使用、男性として生活したいと希望するFemale to Male Transsexualism (FTM)性転換症の症例に対してはアンドロゲン製剤の使用、思春期前期の性転換症症例に対しては第2次性徴の発現を抑制するゴナドトロピン放出ホルモン作動薬の使用
  • MTF性転換症症例に対する「除睾術」「陰茎切断術」「造腟術」などの手術
  • FTM性転換症症例に対する「両側乳腺切除術」「単純子宮全摘術および両側性腺摘出術」「腟閉鎖術」「尿道延長術」「陰茎再建術」などの手術

 性転換症に対する国際的な標準治療は、望む性別の性ホルモンの使用と上記の手術の実施であり、こうした治療によって身体上の不快感を軽減し、望む性別での社会適応を容易にすることだという。

法律の身体的要件に沿うためにも必要不可欠

 同学会は「治療の実施に当たっては、診断と治療適応の判定を慎重に行う必要がある」とした上で、「既に日本では日本精神神経学会が策定したガイドラインに沿って、メンタルヘルス専門家の十分な配慮のもとで実施されている」と紹介。「日本で手術を受けた患者の中で手術そのものを後悔する事例はほとんどない一方で、自殺を考えるほど悩んでいた患者が手術によって立ち直り、望む性で就学、就労して社会復帰を果たすなど目覚ましい効果があった事例は数多く、性転換症に対する手術療法の有効性は確立している」としている。

 今回、保険適用を要望する性同一性障害に対する手術は、すでにさまざまな疾患に対する治療法として一般の医療現場で広く行われており、普及度、技術の習熟度の点では問題がない。

 また、2003年には「性同一性障害者の性別の取扱の特例に関する法律」が成立し、戸籍の性別変更が認められるようになったが、その身体的要件として「生殖腺がないあるいは生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」「他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること」が明記されていることを指摘し、「こうした条件を満たすためには要望書に挙げた手術が必要となるため、倫理面および社会的妥当性の面からも今回の要望内容に問題はない」と述べている。

(あなたの健康百科編集部)