2017年05月10日 06:00 公開

お酒に弱い人が気を付けたい骨折箇所は?

骨粗鬆症による大腿骨の骨折に要注意

 高齢化に伴い、大腿骨の骨折が増えている。年を取ると骨がもろくなったり、筋力が衰えて転びやすくなったりするからだ。特に女性は、閉経後に女性ホルモンの分泌量が下がると、骨密度が急激に低下するため骨折リスクが高まる。このたび、慶應義塾大学の宮本健史特任准教授らは、遺伝的にお酒を飲むと赤くなりやすい体質の人は、骨粗鬆症による大腿骨近位部骨折を起こしやすくなることを明らかにした。さらにビタミンEを摂取すると、骨折予防に効果がある可能性も見出した。研究の詳細は、3月27日発行の科学誌「Scientific Reports」(2017;7:428)に掲載されている。

お酒に弱い遺伝子の保有で、骨折リスクが2.48 倍に

 大腿骨は人の体の中で最も大きい太もも部分の骨で、その骨が脚の付け根付近で折れてしまうのが大腿骨近位部骨折だ。骨粗鬆症による代表的な骨折で、寝たきりや要介護に移行する危険性が高いことから、骨粗鬆症による骨折の中では特に重症の部類に入る。また、骨折してから1年内に亡くなる人がいるなど死亡率も高まる。

 現在、骨粗鬆症の治療には多くの薬が使われている。それにもかかわらず、大腿骨近位部骨折の発生数は増加の一途をたどっていて、年間では約20万件にも上る。こうした現状から、骨粗鬆症治療薬とは異なる方法での対策が求められていた。

 お酒を飲むと体内では、「ALDH2」という酵素が働き、頭痛や吐き気をもたらす「アセトアルデヒド」を分解している。ところが、ALDH2のアセトアルデヒド分解能力には個人差があり、親から受け継いだALDH2遺伝子に左右される。アセトアルデヒド分解能力の低いALDH2遺伝子を持つ人は、日本人など東アジアの人種に多いとされている。

 今回、研究グループは、ALDH2遺伝子の中でも、お酒を飲むと赤くなる体質の原因となる「rs671」に着目。まず、大腿骨近位部骨折を起こした女性92 人(骨折群)と、大腿骨近位部骨折を起こしておらず骨粗鬆症と診断されてもいない女性48人(正常群)のDNA を回収。rs671の保有率を調べ、骨折群と正常群で比較した。骨粗鬆症の治療を受けている人や、過去に受けたことがある人、骨粗鬆症の原因となる病気にかかったことがある人は、正常群から除外した。

 その結果、骨折群では正常群に比べてrs671 の保有率が高く、rs671を保有していると骨折のリスクが2.48 倍高くなることが明らかとなった。

 さらに、研究グループは、マウスの細胞を培養。ALDH2の働きが弱くアセトアルデヒドが蓄積されると、骨をつくる骨芽細胞に機能障害が生じることが示された。そして、骨芽細胞にビタミンEを添加すると、その機能障害が回避できたという。

 今回の調査では、お酒を飲むと赤くなると答えた人が、遺伝的にALDH2 の働きが弱いかを調べる検査において、感度と特異度はそれぞれ80.0%と92.3%と高かった。感度と特異度が高いということは、つまり、お酒を飲むと赤くなることと、ALDH2 の働きが弱い遺伝子の保有とが一致する確率が高いということだ。

 このことは、お酒を飲むと赤くなる人は、骨折しやすい体質である可能性が高いことを示している。さらに、お酒で赤くなりやすいことが、遺伝子検査を受けなくても骨折のリスク遺伝子を持っていることを知るための手がかりになるという。

 今回の結果について、研究グループは、「大腿骨の折れやすさは遺伝することが知られているが、今回の発見もそれを後押しする1つだ」とし、加えて「遺伝的に骨折しやすい人でも、ビタミンE の摂取でリスクが減らせる可能性が示された」とコメントした。

 さらに、研究グループは、「お酒を飲むと赤くなるかどうかが、自分自身や家族など周りの人が骨折しやすいタイプなのかそうでないのかを見分ける目安になる」とした上で、「このことが、高齢者の骨折を未然に防ぐ取り組みを講じるきっかけとなり、家庭での骨折予防につながるのではないか」と期待感を表した。

 お酒を飲むと赤くなる人は、特に、骨粗鬆症から骨折しやすいことを自覚して、骨の健康を意識した生活を心掛けたい。

(あなたの健康百科編集部)

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