2017年05月16日 06:00 公開

突然のむくみ!! 原因はHAEかも

 突然、手足がむくんだり、顔が腫れ上がったり、あるいは呼吸が苦しくなるほど喉が腫れたり、腹痛や嘔吐、下痢などの症状が出たりするー。もしかしたら、それは遺伝性血管性浮腫(HAE*)という病気かもしれない。幸い検査をすれば正確に診断ができ、治療法も確立している難病**だが、一般社会でも医療界でもまだまだ認知度が低く、見逃されているケースも少なくない。そこで、HAEについて広く知ってもらおうと毎年5月16日に制定された「HAEの日」にちなみ、この病気について紹介したい。

浮腫は数日で自然消失、喉頭では窒息死の危険も

 HAEは、親から子、子から孫へと遺伝する病気で、血管の炎症によって生じる腫れ・むくみ(浮腫)が特徴だ。浮腫は全身(顔、喉頭部、消化管、泌尿器、手・腕、足・脚)に起こり、大半は数日程度で自然に消えてしまう。しかし、喉頭浮腫では窒息死に至る危険性もあり、早急な処置が不可欠だ。有病率は人口5万人当たり1人とされ、日本では推計約2,600人といわれている。

 浮腫が生じる原因は、補体第1成分阻害因子(C1インヒビター)という蛋白質の遺伝子変異。「補体」とは、病原体を排除する免疫システムに欠かせない蛋白質で、C1インヒビターの遺伝子変異があると、精神的・身体的なストレスや気候の変化、女性なら妊娠や月経によっても浮腫は誘発される。また、抜歯などの歯科治療でも起こりうる。

 繰り返し浮腫があり、家族にも同様の症状があったりHAE患者がいたりする場合には、HAEの疑いがある。医療機関を受診すれば、採血による補体検査を行うことで確定診断に至る。浮腫が起きた場合には、C1インヒビター補充療法を中心とした治療法が確立している。検査も治療も保険診療ででき、今年(2017年)3月末からは歯科治療や内視鏡検査、出産などの前の短期的予防としてもC1インヒビター補充療法が保険でカバーされるようになった。

医師でも半数近くが知らない病気

 検査法も治療法もあり、予防法も保険が適応されているにもかかわらず、HAEは認知度が低い。2008年に実施された医師およそ4,500人を対象としたアンケートでは、55.3%が「知らない」と答え、現在も医療者における認知度はまだまだ低いという。事実、最初に浮腫が出てからHAEの診断に至るまで平均約20年かかっており、長い人では50年以上も見過ごされているケースもある。

 こうした現状を改善するため、専門医らによるHAEガイドラインが2010年に作成され(2014年改訂)、来年度(2018年度)からは歯科医師国家試験の出題基準(厚生労働省)にも明記されるという。

 一方、われわれ一般市民はどうすれば良いかー。突然のむくみや腫れが繰り返し起こったり、呼吸苦を伴う喉頭の腫れや腹痛などの症状があったり、歯科治療後に浮腫が現れたりする場合には、「HAE情報センター」(http://www.hae-info.jp/)のサイトを訪れてみてはどうだろうか。同サイトでは、症状のチェックポイントの確認や、HAEの検査・診療を行っている全国の医療機関の検索などができ、必要な情報を提供している。

* Hereditary(遺伝性) angioedema(血管性浮腫)の略語。
** 厚生労働省の「指定難病」の1つ「原発性免疫不全症候群」に含まれる。

※本記事は、2017年5月10日にCSLベーリング株式会社(東京都)が主催したプレスセミナーの取材データを基に、当日の講演者の堀内孝彦病院長(九州大学病院別府病院)および田中彰教授(日本歯科大学新潟生命歯学部口腔外科学講座)に監修いただいた。

(あなたの健康百科編集部)

関連トピックス