2017年05月23日 06:00 公開

わずか6問で、大人のADHDを発見

米国の研究グループが簡便な検出ツールを作成

 大人の注意欠如・多動性障害(ADHD)を見つけ出すには、世界保健機関(WHO)が中心となって作成した症状チェックリスト「Adult ADHD Self Report Scale(ASRS)」が使われることが多い。しかし、ASRSは米国の『精神疾患の分類と診断の手引き第4版(DSM-Ⅳ)』の基準に沿って作成されているため、同手引きの最新版である第5版(DSM-5)の診断基準とは合っていない。そこで、米国のマサチューセッツ工科大学などの研究グループは、DSM-5の基準に合う簡便なスクリーニングツールとして、質問項目を6項目に絞った「DSM-5版ASRS」を作成。その正確性を確認したところ、大人のADHD患者を正確に拾い上げることが可能だったという。詳細は、4月5日発行の医学誌「JAMA Psychiatry」(電子版)に掲載されている。

新診断基準で大人のADHD患者数が増加

 ADHDは子どもに多いが、大人になっても症状が残っている人が少なくない。また、最近は大人になってからADHDになる人がいることも明らかになってきた。大人では、精神障害が併存したり、事故でけがをしたりするほか、就業困難や早期死亡などのリスクが上昇するといった報告もあるが、まだ診断に至っていない、あるいは未治療のままでいるADHDの大人は多いと考えられている。

 DSM-5では、ADHDの診断基準を満たす条件の1つである症状が現れた年齢が「7歳以前」から「12歳以前」に引き上げられた。また、成人期ADHDの診断を満たすための症状の数が、5つから4つに減った。それらにより、大人のADHDの診断基準を満たすケースは以前より増えたと見られている。

 しかし、現在普及している大人のADHDのスクリーニングツールはDSM-Ⅳの診断基準に基づいたものであることから、研究グループは今回、一般の人と専門外来を受診した人(合計637人)のデータを用いて、DSM-5の診断基準に準拠した新たなASRSを作成。さらに、このDSM-5版ASRSによるスクリーニング結果の正確性を検証した。

「話に集中できない」「ぎりぎりまで物事を先延ばしに」などの頻度を5段階で回答

 その結果、大人のADHDスクリーニングのための質問項目として、以下の6項目が定められた。

1.直接話しかけられているにもかかわらず、その内容に集中することが困難だと感じることはあるか
2.会議といった着席すべき場面で離席してしまうことはあるか
3.余暇にくつろいだり、リラックスして過ごしたりすることが難しいと感じることはあるか
4.誰かと会話しているとき、相手の話がまだ終わっていないのに途中で割り込んで相手の話を終わらせてしまうことはあるか
5.ぎりぎりまで物事を先延ばしにすることはあるか
6.日常生活を円滑に送るために誰かに依存することはあるか

 スクリーニング対象者は、これら6項目について①全くない②ほとんどない③時々ある④頻繁にある⑤かなり頻繁にある―の5段階で回答。いずれの項目も「全くない」場合は0点とする一方、最高得点は項目ごとに2~5点の範囲で重み付けされ、合計点数0~24点で評価するツールとした。

一般の住民と専門外来受診者のいずれの集団でも有用

 検証の対象となった637人のうち、診断面接でDSM-5の成人期ADHDの診断基準を満たしていたのは268人だった。このうちADHDである確率が低いと考えられる一般住民に、今回作成されたDSM-5版ASRSを用いたところ、14点以上をADHD陽性とした場合に、感度(ADHDの人のうち、検査で陽性と出る人の割合)91.4%、特異度(ADHDではない人のうち、検査で陰性と出る人の割合)96.0%、陽性適中率(検査で陽性と出た人のうち実際にADHDである人の割合)67.3%であることが示された。また、ADHDである確率が一般の人に比べて高いと考えられる専門外来の受診者における感度は91.9%、特異度は74.0%、陽性適中率は82.8%だった。

 なお、今回作成されたスクリーニングツールの6項目のうち、5「先延ばし」や6「他者への依存」に関連した2項目は、DSM-Ⅳと5の診断基準には含まれていない内容だが、最近これらの症状が大人のADHDの診断を予測する上で有効だと報告されているという。

 研究グループは、これらの調査結果を踏まえ「DSM-5版ASRSは、短時間で簡単にスコアが出せる。感度と特異度が高く、一般の大人でも専門外来を受診した大人でも、ADHDの有無を判定することが可能だ」としている。

(あなたの健康百科編集部)