2017年06月29日 06:00 公開

今、妊活、不妊治療に必要なこと

必要な情報とサポートは何か?

 生物学的に人は妊娠できる期間が限られており、男女とも年齢が上がるほど妊娠は難しくなる。晩婚化が進み、子どもを持とうと考える夫婦の年齢が高くなる傾向にあるが、「女性でも頑張ればいつまでも妊娠できる」「男性は何歳でも子どもを持てる」「病院に行けば何歳でもなんとかなる」といった誤った認識が広がっているため、妊活や不妊治療がうまくいかず悩み戸惑う男女が増えている。子どもを授かりたいと願う夫婦が、その願いをかなえるために今、考えるべきこと、すべきこととは何か?「子どもを持つ」ということを人生のハードルにしないために必要な情報とは何か、東京都内で開催された「妊活に必要な情報を考える」セミナーからの報告。

不妊症を自覚しながら受診まで「半年以上」が約4割

 「子どもを授かりたい」と願う夫婦にとって、妊活や不妊治療は他人事ではない。2017年4月、製薬企業のメルクセローノ株式会社は、「妊活および不妊治療に関する意識と実態」について20~40歳代の妊活経験のある男女600人を対象に調査を実施した。

 調査によれば、妊活や不妊治療に対しては男女の意識にギャップがあり、先に妊活を始めたのは女性6割に対し、男性1割。不妊治療においては女性はパートナーに対して「関心を持ってほしい」「話を聞いてほしい」と望んでいることが分かった。

 また、不妊を自覚しても、不妊治療を始めるまで「半年以上」が約4割。年齢が上がるにつれて、受診までに時間がかかる傾向があったという。さらに、受診するまでに3カ月以上かかった理由は、「自然にまかせたかった」が過半数を占め、女性では「費用がかかるから」「どれが良い病院・クリニックかわからなかった」という理由に対し、男性では「自分が不妊だと認めたくなかった」も高かったという。

 不妊治療経験者の約7割が、ためらわず「もっと早く受診すればよかった」と回答した。治療において望むことは「効果が高いこと」が最も多く、「安全性が高いこと」「治療費が安いこと」が続いていた。

不妊治療の「やめどき」は44,45歳

 年齢が上がると女性だけではなく「男性も40歳を越えると妊娠させる力が下がる」と話すのは徳島大学大学院医歯薬学研究部産婦人科分野の苛原稔教授だ。男性は年齢に関係なく妊娠させることができると通説のように言われているが、男性も例外なく年齢が上がると妊娠力は落ちる。事実、不妊症では卵管の障害、排卵の異常、男性側の不妊が3大原因。妊娠は女性だけでなく、夫婦の問題なのである。

 現在、日本の不妊治療施設は611施設、顕微授精の登録のある施設は567施設で、人口当たりの施設数は世界で最も多い。2014年の体外受精施行数は約39万件で「世界でも冠たる体外受精大国である」と苛原教授は話す。

 不妊治療として多くの体外受精が行われているが、そのすべてが出産までたどり着くわけではない。体外受精妊娠率は35歳で急速に下がり、43歳を越えると非常に難しくなる一方で、40歳を境に流産率が上がる。原因の多くは卵子の老化によるものだという。

 「今や、40歳前後が不妊治療の主流になっている。そして、妊娠率は下がっている。つまり、空振りが多くなっている」というのが不妊治療の現実だ。40歳を過ぎて結果が出ずに不妊治療を続ける女性にとって、「やめどき」はいつか?苛原教授は「個人的な考えだが」と前置きしならがも、「不妊治療は44、45歳あたりが1つのラインかなと考えている」と話す。

 この年齢では、妊娠率、出産率が下がるだけでなく、合併症や死亡など母体への影響が出始める。「子どもを授かるなら、自分の命を投げ打ってでも、という気持ちも分からないではないが、母親がいなかったらどうするのか」と訴えた。

 不妊治療は、子どもを授かるのがゴールではない、スタートだ。その先に育児があることを忘れてはならないだろう。

2014年、体外受精で生まれた子どもは21人に1人

 現在・過去・未来の不妊体験者を支援するNPO法人Fineの松本亜樹子理事長によれば、体外受精で2014年には4万7,322人の子どもが生まれた。1990年には「320人に1人」だったが、2014年には「21人に1人」となり、その数は右肩上がりで増えている。

 このように数の上では増えている不妊治療だが、まだまだ「不妊治療はマイノリティ」だと松本理事長は憂慮する。

 マイノリティであるが故の「身体的な負担」「精神的な負担」「経済的な負担」「時間的な負担」といったさまざまな重荷を、ほぼ女性だけが担っているのが現状だという。

 マイノリティであるため、社会で不妊治療に対するの正しい情報が足りない。そのせいで、周囲に理解してもらえない、話せない、仕事との両立ができず退職せざるを得ない、退職はしたものの、治療をしても出産がかなわない、お金も仕事も失う...「子どもを産みたい女性が輝けない社会といった悪循環が生まれている」と松本理事長は指摘する。

 この悪循環をストップさせる第一歩として、「社会の理解と職場でのサポートを広げること」がある。例えば、「不妊治療のための休暇」といった制度を会社で作り、その休暇を取りやすくすることだと松本理事長は語った。

(あなたの健康百科編集部)