2017年07月04日 06:00 公開

米の大統領選が及ぼす健康への影響とは

 このほど東京都では都議選が投開票され、小池百合子都知事を支持する勢力が圧勝したが、2016年に米国で行われた大統領選挙では、民主党のヒラリー・クリントン氏と共和党のドナルド・トランプ氏が対決し、多くの世論調査を覆してドナルド・トランプ氏が勝利したのも記憶に新しい。選挙活動にはプラスの側面とマイナスの側面があるが、トランプ氏の選挙キャンペーンでは、未来に希望を抱いた支持者がいる一方で、不安や恐れを感じた米国民も多かったようだ。米国ハーバード大学公衆衛生大学院のデイビッド・R・ウィリアム博士らは、選挙後に起こりうる健康への悪影響としては、ストレス、病気になるリスクの増加、早産、早死などが挙げられるとしている。詳細は、6月8日発行の医学誌「The New England Journal of Medicine」(2017 ;376:2295-2299)に掲載されている。

社会的敵対心が健康に影響

 トランプ氏は選挙キャンペーン中、社会的少数派や移民、イスラム教徒に対して敵対的な姿勢を示していたが、ウィリアム博士らは、こうした疎外された人々は、選挙の打撃を受ける可能性が非常に高いと述べている。というのは、これまでの研究で、そうした敵対姿勢が当事者にとって精神的にも肉体的にも打撃となることが報告されているからだ。

 ウィリアム博士らは、2016年をはじめとする過去の米大統領選について検討した過去の調査結果を振り返り、選挙キャンペーンが健康にどのような影響を与えるかを考察した。

 バラク・オバマ氏が大統領に選出された後に行われた調査によると、ソーシャルメディア上で、白人系米国人間の人種的な敵対心が活発化し、反オバマ感情が強まった。昨年の選挙時に実施した調査では、学生の間で社会的少数派や移民、イスラム教徒に対する敵対的な態度が高まっていたという。

 ウィリアム博士らは、このような社会的敵対心が、人々の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があるとして、以下の研究を紹介した。

 2017年1月に米国心理学会が実施した全国調査によると、民主党を支持する米国民は、共和党支持者よりも、現在の政治体制に対してより大きなストレスを感じていた。言うまでもなく、トランプ氏は共和党所属、オバマ氏は民主党所属だ。また、非ヒスパニック系の白人よりも少数民族でよりストレスが大きかった。

 2016年8月にカリフォルニア大学バークレー校が行った米国内の1,836の郡における調査では、偏見の強い郡に住む住民は、黒人でも白人でも心臓病による死亡リスクが上昇することが判明。その影響力は、白人より黒人でより強まるという。

 2006年2月のシカゴ大学の研究においては、カリフォルニア州で人種や民族ごとの出産状況を分析したところ、アラブ系米国人に対する敵対意識が強まった9・11以降の6カ月間に、アラブ系米国人女性のみ、その前の6カ月間と比較して低出生体重児または早産児のリスクが増加していた。

ヘイトクライムには断固たる姿勢で患者対応を

 次に、研究グループは、オバマ政権時に成立した医療保険制度改革(オバマケア)法について触れた。手頃な価格で医療保険に加入できるという本法の見直しを、トランプ大統領は就任当初から進めていたが、健康・社会サービスを排除することで、貧困層などの健康上の課題をさらに悪化させる可能性があると警告する。

 研究グループは、医療者に対して、選挙による悪影響を受けた患者がいた場合の対応策を提案している。

●精神療法や薬の処方などで、患者の精神的苦痛に直接対処する

●ヘイトクライム、差別的な政治的表現、および無礼な行為に対して断固とした姿勢を見せ、人種や民族、国籍、社会経済的地位、宗教などによらず、医療サービスを提供することを明確にする

●患者、家族と地域の支援団体との橋渡しとしての役割を果たせるようにする

●地域社会の一員として、医療政策の決定に積極的に関与していく

●選挙に関連した健康への悪影響を軽減するために、どのような介入の仕方が効果的かを検討すべく、さらなる研究を依頼、または実施する

 選挙は、私たちの健康面に影響を及ぼしうる。世界中が大注目する米国の大統領選挙となれば、その影響力は相当大きいに違いない。選挙によって心身がダメージを受けることもあるということを心に留めておく必要があるだろう。

(あなたの健康百科編集部)