2017年07月12日 06:00 公開

くるみやサーモンが食欲を抑える!?

「多価不飽和脂肪酸」が食欲関連ホルモンに影響

 私たちの体の中では、食欲をコントロールするホルモンが分泌され、食物の摂取を促したり、満腹であるというメッセージを送ったりして、適正な体重の維持・管理に役立っている。このたび、米国ジョージア大学が実施した研究で、くるみやサーモンなど多価不飽和脂肪酸を多く含む食事を日頃から摂っていると、空腹感や満腹感に関わるホルモンに良い変化が現れる可能性が示された。研究の詳細は、「Nutrition」(2017;41:14-23)に掲載されている。

空腹感/満腹感を客観的、主観的に評価

 n-3系脂肪酸などの多価不飽和脂肪酸には、悪玉コレステロールのLDLコレステロールを減らす、アレルギー症状を抑えるといったさまざまな効果が期待できる。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、成人男女が摂るn-3系脂肪酸の目安量は、1日当たり1.6~2.4gと設定されている。

 多価不飽和脂肪酸の健康効果に関する研究は日々進められている。多価不飽和脂肪酸は他のタイプの脂肪酸と比較して、食べた後の満腹感が強くなることが、これまでの研究で示されている。しかし、それは1回の食事への反応であり、長期的な摂取に対する影響は分かってない。

 そこで今回、研究グループは、多価不飽和脂肪酸が多い食事を7日間継続し、その前後に高脂肪の食事を摂ったときの、生理的および主観的な空腹感/満腹感について調べた。対象は、18~35歳の健康体重[体格指数(BMI)は18~24.9kg/m2]の男女26名。

 生理的な空腹感と満腹感を評価するため、血液検査でホルモンの変化を測定した。また、主観的な空腹感と満腹感には、Visual Analog Scale(VAS)という評価法を用いた。

 対象者はまず高脂肪の食事を摂った。その後7日間は2つのグループに分かれ、多価不飽和脂肪酸を豊富に含む食事、または米国の標準的な食事(対照食)を摂取。7日間の食事が終わったら、再び高脂肪の食事を食べた。食事の前後に血液検査とVAS測定を実施した。食後の血液検査とVAS測定は、30分ごとに4時間にわたり行った。

 多価不飽和脂肪酸食には、くるみ、アラスカサーモン、マグロ、亜麻仁油、グレープシード油、キャノーラ油と、魚油サプリメントが含まれていた。食事の総カロリーと脂肪の占める割合は両グループとも同じだが、脂肪の種類が違っていた。多価不飽和脂肪酸食には、21%の多価不飽和脂肪酸、9%の一価不飽和脂肪酸(オリーブ油ほか)、5%の飽和脂肪酸(バターやラードほか)が含まれていた。一方の対照食は、多価不飽和脂肪酸の割合が低く、一価不飽和脂肪酸や飽和脂肪酸の割合が高かった。

食欲抑制に働くペプチドYYが増加

 その結果、多価不飽和脂肪酸を豊富に含む食事を摂ったグループは、空腹時に「グレリン」という空腹感を与えるホルモンが減少し、「ペプチドYY」という満腹感を与えるホルモンが顕著に増えていた。また、ペプチドYYは、多価不飽和脂肪酸が豊富な食事を摂った後にも増加していた。このようなホルモンの変化は、食欲の抑制に働くという。

 しかし、多価不飽和脂肪酸食グループ、対照食グループとも、主観的な空腹感と満腹感に変化は見られなかった。

 主任研究者であるジョージア大学のジェミー・A・クーパー博士は、今回の結果を踏まえ、「食欲ホルモンは、食事の量を抑えるのに重要な役割を果たしている。多価不飽和脂肪酸を多く含む食べ物で食欲ホルモンに好ましい変化が起こり、より長い時間、満腹感を維持する効果が期待できる」と述べた。

 研究グループは、「観察されたホルモンの変化が、特定の多価不飽和脂肪酸によるものなのか、あるいは食事全体の組み合わせによるものなのか特定することはできない」とし、「最大限の健康効果を得るための多価不飽和脂肪酸の最適摂取量を見極めるには、さらなる研究の積み重ねが必要だろう」と今後の課題を示している。

(あなたの健康百科編集部)